読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

無限の玄/風下の朱 古谷田奈月著 筑摩書房 2018年

 短編二編収録。第31回三島由紀夫賞受賞作、第159回芥川龍之介賞候補作品。
 ネタばれになってる気がします、すみません;

 無限の玄
その日、家に帰ると父が死んでいた。
父・玄と叔父・喬、兄・律と従兄弟の千尋と自分とで組んでいるブルーグラスバンドのツアーも終わり、先に家に帰っていた父がリビングで死んでいた。警察が検死のために死体を引き取り、飲んで喰って、その翌日。父がそこにいた。
父は死んで、何度も甦る。そしてまた死ぬ。無限に増えていく死体。やがて、父を慕っていた千尋は話し始める。「だから俺、先に行こうかと思って。俺が先に向こうに行けば、玄さんの手を引いてやれる」。そして、叔父が出て行く。
だが、父はまた現れる。そして倒れる。

 風下の朱
大学で、私は野球部に入った。ただ一人の新入部員、先輩の侑希美さんに見初められて。条件は健康であること、瘴気を放たないこと。不可思議なその言葉は、徐々に「私」梓を魅了していく。そして他の先輩との距離を開いてしまった。…


 これは、純文学の系統になるのかな。
 古谷田さんは、何だか胸がざわつく話を書くなぁ。
 二本目、ジェンダーを題材にして、この人は一生色々書いていくんだろうなぁ。侑希美先輩は、あんなに「病気」を苦々しく思っていながら、格好はフェミニンなんだよね。
 「二十八日のうち八日も苦しむ。それがこの先、何十年も続く」「なぜそれが「健康」と呼ばれるんだろう」って台詞には思わず確かに、と思ってしまいました。…いや、納得してどうする(苦笑;)。