読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

かたづの! 中島京子著 集英社 2014年

 第28回 柴田錬三郎賞
 第4回 歴史時代作家クラブ賞作品賞
 第3回 河合隼雄物語賞 受賞作品。

 慶長五年(1600年)、角を一本しか持たない羚羊が、八戸南部氏20代当主で ある直政の妻・袮々と出会う。羚羊は彼女に惹かれ、両者は友情を育む。やがて羚 羊は寿命で息を引き取ったものの意識は残り、祢々を手助けする一本の角――南部 の秘宝・片角となる。
 平穏な生活を襲った、城主である夫と幼い嫡男の不審死。その影には、叔父である南部藩主・利直の謀略が絡んでいた――。
 東北の地で女性ながら領主となった彼女は、数々の困難にどう立ち向かったのか。 けっして「戦」をせずに家臣と領民を守り抜いた、江戸時代唯一の女大名の一代記。            (帯文より)


 夫・南部直政が死んだ。葬儀から一週間も経たないうちに幼い息子・久松も死んだ。裏にはおそらく豊かな八戸の土地を狙う叔父・利直の策略がある。お家のためには叔父に頭を下げるしかないが、いずれ領地を乗っ取られるかもしれない。直政の妻・袮々は自分が女亭主になって領地を治めることを思い付く。いずれ、娘に婿を取って家督を譲るまでの暫定措置として。
 だが事は順調には進まなかった。自身に起きた縁談を、剃髪して仏門に入ることで拒否した後、長女・福姫には利直の長子・政直との縁談が持ち上がり、仕方なくそれを受けたら、次は次女の愛姫に再び四男との縁談が舞い込む。祢々はハンストまでして自分の見込んだ男・新田三五郎こと南部弥六郎直義を福姫の婿に迎える意地を通したが、今度は直義の有能さが見込まれて利直が側から離さない。南部政直は図らずも実の父・利直に毒殺され、福姫も後を追う。やがて、遠野への国替えが命じられた。
 このような屈辱には耐えられない、と武士たちがいきり立つ中、祢々は叔父が八戸の反乱を待っていることを見抜き、遠野行きを説得する。苦労して雪山を越え辿り着いた遠野は土地も人心も荒れ果てていて、しかも直義はすぐまた三戸に呼び戻された。叔父が遠野に手出しできないよう、中央を掌握してくるという直義。祢々はまた女領主として采配を振るわねばならなくなった。伊達との金山の境界争いや、八戸からついて来てくれた者、遠野に元々いて新参の領主に尽くしてくれた者、両者の間に軋轢が広がっていく遠野の地で。…


 そう言えば話題になってたなぁ、と手に取った一冊。「あれ、戦国時代末期の話だったのか」と読み始めて気が付きました。予備知識がほぼ入ってない状態だったので; ふ~ん、上杉景勝って、いずれ徳川家康に反旗翻すんだ~。(←そう、私の戦国時代の知識はこのレベル;;)
 羚羊が語り部、という設定もユーモラスだし、河童が出てきたりぺりかんが出てきたり、取っ付き易そう、と思ったの束の間。…結構ハードな内容でした;
 宗家との争いも遠野への国替えも領地でのいざこざも、全て史実なんでしょうから仕方ないんでしょうけど、妙なやりきれなさが心に残りました。
 いや、祢々と母親との会話とか面白かったんですけどね、叔父との対決に当たってのアドバイスが「あなたは私より容貌が劣るぶん、賢さがそのまま顔に出ます」「美貌は女の隠れ蓑」「まず泣きなさい」だもんなぁ(笑)。しかも似たような会話、御母堂が死ぬ間際にもまた交わしてるし。ピュアに実践してみせたのは福姫でしたね。
 そうそう、河童の成り立ちも初めて知りました。左甚五郎のかんな屑だったとは…! 『しゃばけ』シリーズにも出て来た河童の祢々子にも会えて、妙に嬉しかったです。