読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

私はフーイー 沖縄怪談短編集 恒川光太郎著 メディアファクトリー 2012年

 沖縄を舞台にした短編集。

 弥勒
老女に胡弓を託された隼人。その縁で観光に来ていた女性と知り合い一緒になるが、妻は島特有の幻「ヨマブリ」に触れて死んでしまう。隼人はヨマブリに聞かせるため、胡弓を弾く。

 クームン
クームンは森の中に住んでいる。廃屋寸前の民家で、周囲の木に無数の靴をぶら下げて。「私」は古くなった靴を手に、クームンの家に向かう。靴と引き換えに、願い事を叶えてくれるというクームン。叔父が嫌で逃げてきた、という少女に会った「私」は、クームンの家で一晩過ごすように勧め、そして願う。もう一度彼女に会えますように、と。

 ニョラ穴
和重は酔った勢いで人を殺し、無人島に逃げ込んだ。所がそこには先客シンゴがいた。シンゴは島の洞窟にはニョラがいる、という。見えない妻や父親と話し、毎日ニョラに餌をやっている、というシンゴ。訳の分からなかった和重も、やがてシンゴと入れ代わるように、ニョラに取り憑かれるようになる。

 夜のパーラー
夜のパーラーで出会ったチカコは、血の繋がらないオバァに搾取されている、と言う。親しくなって何度か通ううち、オバァの殺人を依頼される「私」。勿論断ったが、やがてパーラーから、男の死体が発見されたというニュースが流れる。チカコは別の男にオバァ殺害を頼んで、そしてその男は返り討ちにあったのだろうか。やがて、チカコから電話が入る。

 幻灯電車
父親がいなくなって数年。チイコはナコ姉から、実は母親が父親を殺したのだと聞かされた。死体の始末を手伝ってくれたのがデンさんで、以来、母親とナコ姉はデンさんの相手をしている。その手はやがてチイコにも伸びてきた。16歳の時、チイコは交際相手から毒を手に入れる。チイコはそれを、デンさんの殺害に使うことにする。

 月夜は夢の、帰り道
南の島のお祭りの夜、大場彦一は見知らぬ女から父親の死と母親の出奔を予言される。それから彼の転落の人生が始まった。中学で喧嘩相手を死なせてしまい、人に騙され、真面目に勤めていたのに解雇された。そして彼は、再び離島に向かう。そこで知り合った女性に、何度も自分の後悔を話す。魔女だと名乗る彼女に。

 私はフーイー
島に流れ着いた女は、フーイーと名乗った。フーイーは姿を変えることができた。ある時は猫に、ある時は山羊に、時には白い鷺に。そして、死んでから50年後に、別の少女として生まれ変わる。16年生きて、さらにもう一度の転生。その時本島は、米兵に襲われた。…


 恒川さん、沖縄在住だそうで。
 沖縄と言えば私には池上永一さんなんですが、池上さんの作風が根底で明るいのに対し、こちらは全体的に暗くて幽か。恒川さんの元々の作風と言えばそうなんですが、これは移住者と現地者の差があるのかもしれないなぁ、と思ったり。
 どちらにしろ好きなんですけどね、不思議で陰影のある世界観。どの作品も、ああ、好きだなぁ、と思いながら読みました。