読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ミリオンセラーガール 里見蘭著 中央公論新社 2013年

 恋人にフラれたその翌日、アパレル会社をリストラされた主人公・正岡沙智。彼女は心機一転、ファッション誌の編集者を志して「紙(かみ)永(なが)出版」という中堅出版社を受ける。
 普段ろくに本を読まない沙智はトンチンカンな受け答えしかできず、面接落ちを覚悟するが、社長の鶴の一声で合格。しかし、彼女が配属されたのは、ファッション誌の編集部ではなく、聞いたことのない「販売促進部」という部署。しかも、バブル時代の栄光を引きずる女性部長宍戸明美、イケメンで体育会系の副部長川合修太郎、外に出ずにデータ分析しかしない先輩仁本礼、地味系文学少女の先輩小塚真琴など、多士済々の曲者ぞろい。気を取り直して臨店に励む沙智だったが、書店側は邪魔者扱い。
 「書店員なんか、大っ嫌いだー!」。大酒飲みながら愚痴り倒す日々が続くが、面接時に知り合ったあるエロ編集者玉村から特命を下される。初版1万部にも満たない無名作家の新作を、「ミリオンセラーにせよ」というものだった。
 やがて、沙智は、販促部員、そして書店員や取次をも巻き込んだ「仕掛け」をするが…!?
 出版不況をも吹き飛ばさんばかりの、書店営業たちの熱き戦いが始まる!
                                      (紹介文より)

 テンポよくすらすら読める一冊。
 ただね、ごめんなさい、どうもこの主人公に私肩入れできなくてですね;
 出版社に就職しといて、あまりにもあまりにも本の知識がなさすぎる。心がけもよくない。返本制度も知らなくて現場で教えて貰う、ってのはどうだろう、この出版社は新人教育に問題があるよ。そして、偏見と思われても仕方ないですが、20代までまるで本を読んでこなくて、漫画も読んでなくて、いくらカリスマ書店員に触発されたとは言え、いきなり読書家になれるだろうかというのはどうしても疑問に思いました。数か月やそこらで本を勧める立場に?? 
 こういう設定は状況を読者に分かり易く説明するために仕方ないんだよ、と自分に言い聞かせつつ読みながら、それでも何度かむっとしました。で、「この人、だれだっけ??」な登場人物が結構多くてですね…ってこれは私の記憶力の所為か(苦笑;)。
 そのカリスマ書店員の説明にしても、例がもう、もろ実際の出来事で。これ、ミリオンセラー出したPOPを書いた書店員さんの了解は得てますよね?? 参考文献にも名前がないし、謝辞もないし、ひとごとながらちょっとはらはらしましたよ。
 2週間以上も注文を放っとく、っていくらなんでもどうかと思うしねぇ。
 ただ、勿論頷ける箇所も多々ありまして。地元の本屋さんに取り寄せを依頼した本がとにかく来ない、何ヶ月待っても来ない、連絡も来ないってのにはその昔よく泣かされました。しかも本屋さん自体が諦めているのが余計に腹が立つ。ある程度大人になったら、梅田か神戸の大きな本屋へ行って買って来る、という技を覚えてしまいまして。そうして町の本屋が消えていく現象の片棒を、私も担いでいた訳ですね。しかも今は図書館愛好者だもんなぁ。
 在庫の山を憂う仁本さんが、電子書籍について語る件にも、そういう見方があったか、と目から鱗でしたし。…でもごめん、私は紙の頁をめくりたい(苦笑;)。
 挿画も可愛らしくていい感じです。ただ、中心にいる女の子が主人公とはちょっと思えないけど。こんな華奢じゃなくて、もっとしっかりした体型の持ち主じゃないかな。特筆すべきは裏表紙ですね、これはあの無愛想なカリスマ書店員なんだろうな、と一目で分かるのが凄い。
 そうそう、宍戸部長の口から出て来る売れっ子作家の名前に中に、森見さんが出てきたのにもちょっとどきどきしました。…モリミー、立派になったねぇ。(しみじみ)