読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

古書カフェすみれ屋と悩める書店員 だいわ文庫 里見蘭著 2017年

 シリーズ二冊目。
 ネタばれになってるかも、すみません;

ほろ酔い姉さんの初恋
 常連客の知穂さんは、読書とお酒と美味しいものをこよなく愛する32歳。容姿に自信がないことも相まって、恋愛沙汰に無縁で生きてきた。所が開設しているブログを通じて、とある男性と食事をすることに。蕎麦屋でのデートで、お互い好感を持ったと思っていたのに、何故かその後連絡が途絶えてしまった。何のミスを犯したんだろう、と悩む知穂さんに、紙野君は『古典落語』の『長屋の花見』を読むよう勧める。

確かに疑問はあったんですよ、蕎麦屋に誘っといて日本酒を飲まないとか変だなぁ、って。個人的に、酒の肴はご飯の友でもあると思っているので、お相手の方はさぞかし白いご飯が欲しかっただろうなぁ、と同情しましたよ。
長屋の花見』の噺自体は知っていましたが、こんなオチだったんですね(苦笑;)。何か、卵焼きに見立てたたくあんを音を立てずに食べるとかのディティールばかり覚えてました。


書店員の本懐
 すみれと紙野君の前の職場の同僚 堺君が訪ねて来た。書店員の彼は、お客さんから尋ねられた「いいん」という本が見つからなくて困っているという。ついでに、新人の後輩書店員の、センスあるポップにも落ち込んでいるらしい。紙野君は『脳の右側で描け』という本を、堺君に紹介する。

確かに、本好きの人のポップは文字量が多いかも。自分が抵抗がないからなんでしょうが、普段本を読まない人の中には、ポップを読むことすら苦痛に感じる人もいるでしょうね。センス、ってのは真似できないもんなぁ。
「いいん」の謎は、何だか察しのつくものでした。

サンドイッチ・ラプソディ
 雑誌の企画で、新しいサンドイッチメニューを考えることになったすみれ。折も折、出入りのパン屋さんから、戦後すぐ位に食べた「ジョーさんのハンバーガー」を恋しがっているお婆さんがいるとの話を聞く。試行錯誤を繰り返すすみれに、紙野君はウディ・アレンの著書『これでおあいこ』を差し出す。

新しいスタッフ ほまりさんとの児童書にまつわる会話に大興奮!しましたね。
『チックとタック』、懐かしい――! ゛ぎゅうにくのつけやき”は覚えてなかったけど。あの作品で覚えてるのはわさびのきいたおすしだなぁ。
『エルマーのぼうけん』のももいろのぼうつきキャンデー、『赤毛のアン』のいちご水、そうそう、もう読みながら激しく同意(笑)。
でも私が個人的に思い入れのある食べ物は『小公女』のぶどうパンに『エーミールと探偵たち』のバタつきパン、『ちびくろサンボ』のホットケーキとかなんですけど。
何より忘れてならないのは『大どろぼうホッツェンプロッツ』シリーズのやきソーセージとザワークラウト、きのこのスープ、泡立てた生クリームをつけたプラムケーキやアッペルシュトルーデル。もうどんな食べ物なんだろう、とわくわくしましたっけ。後々、椎茸もきのこの一種、と気付いた時には愕然としましたよ(苦笑;)。
話の内容自体は『美味しんぼ』でしたねぇ。

彼女の流儀で
 常連客の中村さんは、彼女との結婚を考えている。だが中村さんの親が反対しているらしい。中村さんの実家は華道の家元、プロの大道芸人として世界中を飛び回っている彼女は、古風な家柄とはどうも相容れない。彼女の人柄を見て貰おうと計画した食事会で、彼女は当初のメニューとは違う料理を出してきた。急に献立を変えた理由が彼氏には分からず、それに気づかないことで彼女からは交際を考え直したい、と言われてしまった。話を聞いた紙野君は、幸田文の『台所のおと』を中村さんに持ってきた。…


 相変わらず、美味しいものと本の知識が詰め込まれた、もうツボをくすぐりまくりな一冊。ミステリー部分に関しては「ちょっと無理がないかい」だったり「もっと早く気が付かないか?」だったり、ってエピソードだったりもしたんですが、まぁそれはそれ、ってことで。
 教科書に載ってた児童書を集めたという『光村ライブラリー』は、是非読んでみたくなりましたよ。…でも私の通う図書館には所蔵されてないみたいなんだよなぁ、残念;