読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

クローズド・ノート 雫井脩介著 角川書店 2006年

 教育大に通う「私」堀井香恵はある日、一人暮らしのマンションのクローゼットに、一冊のノートを見つける。どうやら以前香恵の部屋にいた住人の忘れ物らしい。バイト先の文房具店で気になる男の人を見かけても、親友の葉菜ちゃんは海外留学に行ってしまって、相談に乗って貰うこともできない。寂しさを紛らわすように、香恵はノートをめくっていく。
 ノートの主は真野伊吹さん。小学校の先生をしているらしい。初めて四年生を受け持った緊張、不安、何より溢れる希望やわくわく感が書かれている。児童一人一人に真摯に丁寧に対応し、時には優しく、時には怖く、時には子供たちよりはしゃいで学校行事に参加する伊吹先生。子供たちから信頼され好かれている様がありありと伝わってくる。いつしか香恵は、伊吹学級の一人のように、伊吹先生にも子供たちにも親近感を覚えていた。
 喘息持ちで努力家で、大学の同級生「隆」への恋を忘れられない伊吹先生。偶然「隆」と再会した伊吹は、徐々に彼との距離を縮めていく。その真っ直ぐな様子は、香恵の恋の背中も押した。万年筆を買いに来たイラストレイター・石飛さんへの想いを、香恵は形にして出して行く。…
 
 このオチは、多分読んでる人ほとんどが気付くでしょうね。
 前半の万年筆のくだりが後半とんと出て来なくなっちゃったりするとか、葉菜ちゃんの扱いが今一つぞんざいな気がしたりとか、構成の面でもまだまだ色々工夫する余地はあるとは思うのですが。
 でも、いい話だ。
 伊吹先生、魅力的だなぁ。こんな真面目で熱心な先生、実際にいるんだなぁ。正直、主人公の女の子にはあまり惹きはありませんでした。いやいや、いくら口車のうまい男だったからって、友人の彼氏にぐらついちゃ駄目でしょう。そこははっきり断わらなきゃ。
 見えないひたむきな「先生」に導かれ、香恵も成長していく。「お姉ちゃん」的な立場でしたが、本当の主人公は伊吹先生かもしれませんね。