読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

『秘密の花園』ノート 梨木香歩著 岩波ブックレット№773 2010年

 誰からも愛されることなく、「ひねくれて」育ったメアリは、荒涼としたムアに建つ屋敷で、うち捨てられた「庭」に出会った。彼女は、従兄弟のコリン、友人のディコンとともにその「庭」を美しい「花園」へと甦らせていく……。
 作家梨木香歩が、「庭」とともにたくましく甦る生命のプロセスに寄り添い、名作の世界を案内する。
                                          (裏表紙の紹介文より)

 『秘密の花園』って、こんなにも暗喩に満ちた作品だったのか…!
 出て来る生き物がヘビからネズミの子へ、コマドリやヒツジの赤ん坊やリス、カラスへ、段々に温かいものになっていく構成。主人公メアリは両親から愛情を注がれることなく、自分が「わがままな、いやな子」だという自覚もなかったのに、徐々に客観的に自分を見られるようになって行く。やはり長年放っておかれた『秘密の花園』がメアリと重なる。ディコンたちと知り合って、ある程度メアリも救われた所で、自分と同じくらい「いやな子」従兄弟のコリンと出会い、今度は彼の導き手になる。
 最終的にメアリそっちのけで終わったラストを、私は不満に思った覚えがあるんですが、梨木さんによると「ごく妥当なこと」なんだそうで。
 作者バーネットがどこまで考えて書いたのかわかりません。例え意識して緻密に構成したんじゃなくても、「何となく入れといた方がいい」感覚ででもエピソードを描くセンスは、やはり作家ならではなんでしょうね。で、それを読み解く梨木さんの力。
 深読みか、読解力か。どちらにしろ私にはないものだなぁ、とつくづく思いました。『秘密の花園』、読み返してみようかしら。でも私は『小公女』の方が好きなんですけど。