読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

植物図鑑 有川浩著 角川書店 2009年

 ある日いきなり文字通り「草食系男子」を拾ったOLの約二年間。

 冬の終わり、河野さやかはマンションの目の前で行き倒れていた青年を見つけた。「咬みません。躾のできたよい子です」――酔っ払っていたことも手伝って、さやかはその青年を家に泊める。青年は翌日の朝ごはんで、さやかの胃袋をがっちり掴んでしまった。
 苗字も出身地も喋りたがらない、微妙に訳あり風情の男は、「イツキ」と名乗って近所のコンビニにバイトを決めて来た。行き倒れるほど困っていた癖にカメラはデジタル一眼レフ、居酒屋でバイトしていたとかで料理の腕も滅法上手く、倹約家のハウスキーパーとしても一流。そして何より、草花の知識が半端なかった。
 フキノトウを摘んでばっけ味噌にしたり、フキ、ツクシを佃煮にしたり。ノビルとセイヨウカラシナのパスタ、タンポポの天ぷらとバター炒め、イヌガラシのおひたしにスカシタゴボウのごま和え。ワラビの煮付け、イタドリの中華風炒め。ユキノシタの天ぷら、クレソンのサラダ。ノイチゴはジャムにして、アップルミントはミントティーに。スベリヒユからし酢味噌和え、イヌビユは牛コマと炒めて柳川風、ヨモギはお茶にも天ぷらにも。でもアカザ・シロザは減って来ているから採らないように。
 シロツメクサアカツメクサで花冠を作り、厄介な雑草でしかなかったヘクソカズラの花の可愛らしさに息をのむ。街路樹のハナミズキの実の不思議に気付く。イツキの言葉の一つ一つに一喜一憂し、彼の動作を意識する。コンビニのバイト仲間に焼きもちを焼き、想いを確かめ合い、でも冬の始まりのある日、イツキは姿を消してしまう。料理のレシピと「ごめん。またいつか」の置手紙を残して。…

 有川浩版『きみはペット』。
 「男の子の前に美少女が落ちてくるなら女の子の前にもイケメンが落ちて来て何が悪い!」がコンセプトだそうで。
 …う~ん、いいなぁ、家事一切やってくれるのかぁ(←え、そこ!?・笑)。
 男性から見たらどう言う風に見える話なんだろう、と思ってみたり。案外すんなり読めるかな。だってこの主人公の女の子、こっそりイツキに調教されてたりするんですよね、お化粧とか趣味とか。野草オタクの青年が女の子を自分好みに育てる話…違うか(笑)。
 この世は食材に満ちてるんですね~(笑)。梨木香歩著『からくりからくさ』でも雑草を料理する場面が出て来ましたけど、えらく印象が違うなぁ(笑)。私はツクシ狂なのでツクシをないがしろにする態度は許せませんが、ヨモギ茶は今度やってみよう、と思いました。イタドリはスカンポのことですよね、あれもジャムにもできるんじゃないかな。「料る」って言葉は初めて知りました。でも動物性蛋白質がハムに卵にベーコンって、それで間にあうのか、20代男女!(笑)
 セキレイは私もよく見かけます(って多分有川さんと結構近い距離に住んでるんじゃないかと思うんですが・笑)。あれは尾っぽを上下に振ってる姿も可愛らしいんですよね~。
 さやかの家庭環境が取ってつけたようでちょっと気になりました。あまりにも実家に帰らないし、その理由は後半になってちょこっと明かされますが、三か月前まで半同棲状態の彼氏がいたのにお見合いとか勧められるかなぁとか。インドア派と言いながら、イツキが現れるまで彼女は休みを何して過ごしてたんだろうと言うのも。本は少ないみたいだしゲームしてた訳じゃなさそうだし、家事こなしてた風でもないし、職場以外の友人とか出てこないし。ただごろごろしてたのかなぁ?? まぁいいんですけどね、シチュエーション漫画の小説版だもの、「この状況」を深く考えず楽しまなきゃ。
 可愛らしい装丁なんですが、この表紙の女の子は印象違うなあ。さやかがこんなワンピースを着るタイプには思えないんですけど、ケチつけすぎかしら。