読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

神様からひと言 荻原浩著 光文社 2002年

 ネタばれと言うか、最後の方まで粗筋書いてます、すみません;

 大手広告代理社から珠川食品に転職した佐倉凉平。昭和を引きずる古い体制を払拭するため、副社長で創立者の孫・玉川政彰に販売促進課に抜擢されたものの新製品のプレゼンに失敗。総務課のお客様相談室に左遷されてしまう。
 お客様相談室は社内のリストラ要員の強制収容所。かかって来る苦情電話に対応する仕事だが、一緒に働くのは一癖も二癖もある面々、毎日辞表を書いては破り捨てる日々が続く。
 私生活も上手くいかない。5年間も一緒に暮らしていた彼女・リンコは半年前に出て行ったが、何故出て行ったのか分からなくて未練が募るばかり。鬱憤晴らしに、その昔プロを目指して練習していたギターを片手に公園で弾き語りをしていたら、まるで神様のようなホームレスの男に出会う。凉平は彼の放つ一言に心を打たれる。
 らっきょう漬けに虫が混入していたと難癖を付けて来る客、鬱憤晴らしに苦情電話をかけて来る主婦。先々代社長の愛人だった女、通称「明石町」の呼び出し。販促キャンペーンのスクラッチ印刷ミスの尻拭いまでさせられるが、凉平は部署の先輩・ギャンブル狂の篠崎の助けもあって、それぞれを解決して行く。
 篠崎との活躍は副社長の目に止まり、新商品開発のための、協賛ラーメン店主人との調停を仰せつかる。体当たりで主人の信用を取り付ける凉平。せっかくカップ麺の欠点を教えてもらったのに、副社長は改良する気はまるでない様子。どうやら製粉会社と裏取引をしているらしい。
 不正を掴んだためにお客様相談室に流されてきた神保や副社長秘書・宍戸由里の情報も得て、凉平は復帰のチャンスのプレゼンで全てをぶちまける。寸での所で凉平を救ったのは、明石町がずっと探し続け、篠崎が後押しした行方不明の会長だった。…

 最初の方でちらっとユニバーサル広告社の名前も出て来て、ちょっとにやり。『オヨヨ畑~』なんかと同じ世界の話なんですね。
 出てくる登場人物みんな一癖も二癖もある人ばかり。しかも駄目な方に(苦笑;)。篠崎さんなんかよくこんな人雇ってるよなぁ、ある意味とても有能な人なんだけど(笑)。
 でもそれだけに、段々いい方向に向かっていくラストは爽快でした。最初、ホームレスさんの正体が実は会長さんなのかと思ってたんですが、それは全く裏切られました。…そうよね、そんな訳ないよね。
 何度でもやり直しは効くんだ、と言う暖かさは相変わらず、読後感いいお話でした。