読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

きのうの世界 恩田陸著 講談社 2008年

 ネタばれになってるかな、すみません;

 「塔と水路の町」と謳われる小さな城下町で、ある日男が殺された。
 腹部を鋭利な刃物で刺された男・市川吾郎の死体は、果樹園のある丘にかかっている小さな木製の橋――水無橋で見つかった。
 一年前、いきなり失踪して行方が知れなくなっていた吾郎。
 どこと言って特徴のなかった男は町の測量をしていると言って、水路や地形、町の歴史について色々訊いて回っていたらしい。特に町中に建っている三本の塔について興味を持っていたようだ。モチーフになっている駅のステンドグラス、うち一本が修復されずそのままになっている理由。駅の掲示板に鬼の顔のような線画を貼り紙し、喫茶店の女店主や焚き火をしていた高校生・田代修平に親しげに話しかける。郷土史を研究していた元高校教師・田中健三に話を聞く。吾郎の死体を発見したのも田中だった。数週間後、田中も心臓発作で死んでいる。
 やがて彼の生前の行動を追って、一人の旅人が現れる。彼女・楡田栄子もまた町の人々に男のことを尋ね、この町の水路を作った新村家の女当主・新村志津に話を聞く。翌日、彼女は宿泊先のホテルで体調を崩し、そのまま帰らぬ人となった。
 次々に起きる余所者の死、不穏な町の空気の中、残る二本の塔も燃える。雨足もひどくなって来た。この町で何が起こっているのか、双子の老姉妹、退職した刑事、もう一人の自分に怯える酒屋の若店主、新村志津の親戚筋の娘・和音。町人の不安が募る。…

 主役は町ですね。どこがモデルなんだろう。
 やっぱり恩田さんの作品好きだな~。
 いいたいことはあるんですよ、弟はどうなったとか、ハサミと亀と天の川はどんな意味なんだとか(亀と天の川は何となく分からないでもないけれど)、小学生の間で流れた赤いリボンの噂はどこから来たんだとか。市川吾郎を社葬(?)してくれた会社は一体、とか。焚火の炎がゆらいだ理由もわからないままですよね。
 最初「あなた」と表記される旅人が女性だったことにびっくり。無意識に男性で読んでましたね。
 吾郎が死んだ朝に拾われた地図の理由とか、栄子の死因とか結構あっけなかったなぁ。
 でも好き。クライマックスの雨の中、緊迫感が高まってどきどきわくわくしました。贔屓の引き倒しでもいいや、面白かった!