読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

陽だまりの彼女 越谷オサム著 新潮社 2008年

 ネタばれまでは行きませんが、粗筋大体書いてます、すみません;

 10年ぶりに会った彼女はすっかり変わっていた。成績が悪く雰囲気も読めず集団行動が苦手でいじめの対象になっていた渡来真緒は、名門女子大を出て新進気鋭の下着メーカーに勤めるキャリアウーマンとして、鉄道専門の広告代理店社員「僕」奥田浩介の前に現れた。
 中学一年の時たまりかねて彼女を庇って以来、僕もクラスから浮いた存在になっていた。ますます彼女は僕に懐き、僕はそんな彼女を重荷に思いながらも分数を教えたり英語を教えたり。だが中学三年の夏、僕は転校してしまう。自分の中で大きな存在になっていく彼女に戸惑い、持て余して、そのまま逃げてしまった僕。その僕を彼女は変わらず好きでいてくれたらしい。
 相変わらず気まぐれで猫舌で少食で、陽だまりが好きな彼女。初デートにステーキハウスを選び、ひらひらした可愛い下着に目を細め、背中をこすりつけるように甘えてくる。執念深くもあるその性格に、かつての自分を後ろめたく思いながら、僕はまた恋していく。
 順調に行くかと思われた交際は、思わぬところで反対にあった。真緒は13歳の時、全裸で歩いている所を保護された、身元の分からない子供だったのだと言う。それまでの記憶はまるでなく、現在も取り戻せていない。もう少し考えた方がいいと言う真緒の義理の両親の言葉に、ショックを受けながらも僕の決意は揺るがない。勢いのまま、「駆け落ちしよっか」「籍入れちゃえ」。――本当に結婚してしまう。
 新婚生活は幸せだった。初めて行ったオペラに感動し、映画をハシゴし、上機嫌で「ビーチ・ボーイズ」の鼻歌を口ずさむ。真緒の女子大での友人からは「浩介が運命の人だった」と僕を探して合コンしまくっていた彼女の姿を聞く。ますます愛しい彼女は、だが段々様子がおかしくなって行く。
 大金を銀行から下ろし理由を言わない。居眠りする時間が増えて来る。指輪のサイズが変わるほど痩せた上に大量の抜け毛、遺言のような言葉。医者に行っても悪い所は見つからない。マンションの隣室の子供がベランダから落ちたのを驚異的な運動神経で助けた翌日、真緒は姿を消す。彼女のことは、僕以外誰も覚えていなかった。僕は半狂乱で真緒の行方を捜す。…

 この作品を受け入れられるかどうかは多分二点。彼女を魅力的に感じられるか、このオチを受け入れられるか。
 残念ながら私には、彼女はあまり好感の持てる女の子ではありませんでした。どうやら恋愛物らしいと分かったとき嫌な予感はしたんですよ、越谷さんの前作『階段途中のビッグノイズ』でも、女の子のキャラクターにあまりリアリティを感じなかったので。
 交際から結婚まで早い早い。「そんなに急がなくても両親をじっくり説得すりゃいいじゃん」と思いつつ。まぁ彼女には先を急ぐ理由があった訳なんですが。二人が繰り広げる新婚生活は甘甘。バカップルだねぇ(笑)。
 この彼女、男性が読んだらきゅんきゅんするような女の子なのかしら。それこそ女性陣が有川浩さんの作品を読んで「くぅぅぅ―――っ!」って思うように(笑)。…参考にしよう(←こらこら・笑)。
 このオチがおそらく一番の問題だろうなぁ。伏線と言えば伏線をちゃんと引いてはあるんだけど、いきなり世界観変わっちゃう感じがしました。面白くない訳ではないんだけど、こっちの伏線も欲しかったかも。
 そう、だから私は○派じゃなくて×派なんですって。…これが一番大きな理由かな(笑)。