読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

七回死んだ男 西澤保彦著 講談社ノベルス 1995年

 西澤保彦、デビュー三作目。
 ネタばれまではしてませんが、かなり細かい所まで粗筋書いてます、すみません;
 
 主人公・大庭久太郎(高1)は不思議な体質をしている。それは何かの拍子に同じ日を9回繰り返す“反復落とし穴”に嵌まり込む、と言うもの。その間の記憶があるのは久太郎一人きり、それを利用して難関高校に受かったり小遣いをせしめたりもしてみたが、何回も嵌まるうち、妙に老成した人格になってしまった。
 正月、祖父の家での新年会。大金持ちの祖父は自分の後継者を毎年ころころ換えて遺書を書いているらしい。久太郎の母・加実寿や叔母・葉流名は、自分の息子や娘が選ばれないかと目の色が変わっている。祖父と散々飲み食いした二日目、例の“反復落とし穴”に嵌まってしまった。
 二日酔いに苦しんだ久太郎は、もうあんな思いはごめんだとオリジナル周と違う行動をとる。おかげで長兄・富士高と従姉のルナが恋仲で、結婚して遺産を継ごうとしていることを知る。祖父に直談判しに行く二人。その直後、屋根裏部屋で祖父の死体が見つかる。傍には凶器と思われる花瓶が転がっていた。
 三周目、そんなことが起こるはずはない、と久太郎は祖父の死を止めようとする。富士高とルナを監視するため、二人の仲を他の家族にも公表するよう説得。だが、それを知ったルナの姉・舞は半狂乱になり、屋根裏部屋に乗り込む。結局事件は起きてしまった。
 四周目、舞の部屋へ行く久太郎。富士高とルナの仲をばらし、舞が二人に喧嘩を売るよう焚きつける。何とか三人とも祖父から引き離したものの、今度は次兄・世史夫が祖父と屋根裏部屋へ引きこもり、事件は起こってしまう。
 五周目、兄弟従姉全員を巻き込んで、久太郎は祖父の日記を盗み読むことにする。父の左遷、叔父の馘が祖父の差し金であったことを知る皆。ふと窓の外を見ると、母・加実寿が屋根裏部屋のある母屋に行くところだった。手には花瓶を持って。
 六周目、今度は家族親戚全員を集めての家族会議。積年の思いが募って壮絶な大喧嘩が起こる中、祖父の秘書・槌矢の姿が見当たらない。お手伝いさんの話では、花瓶を持って母屋に向かっていたとか…。
 七周目、祖父も集めて全員で飲み会を開こうと計画。祖父を呼びに行ったら、屋根裏部屋への急な階段から落ちて頭を打っていた。
 八周目、祖父との屋根裏部屋での飲み会につきあうことを決意。ところが富士高とルナが途中参加してきた。祖父は二人の仲を祝福して上機嫌、杯を重ねて行くうち、酒量が過ぎて倒れてしまう。
 最終周、祖父に酒を止めさせることで、ようやく祖父の死を止められた久太郎。だが、何か違う気がして仕方がない。
 階段途中に落ちていたルナのイアリング、来ていた筈の弁護士がいないこと、もう一人の秘書・友理との会話。全てが終わったあと、友理が謎を解いてみせる。…

 面白かった! そうそう、新本格にリアリティなんか求めちゃ駄目だよね、最後に全てに説明がつく爽快感!(笑) 同じ日の別のエピソードを、よくこんなにも思いつくとも。
 …でもこの作品から、佐々木淳子の短編『霧ではじまる日』を連想したのは私くらいなものでしょうね(苦笑;)。