読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

流星ワゴン 重松清著 講談社 2002年

 「僕」永田一雄(38歳)の家庭は取り返しが付かないほど壊れていた。中学受験に失敗した息子・広樹は公立中学でいじめを受けて不登校、親に暴力を振るう。妻・美代子からは離婚を切り出されている。一雄自身もリストラに会い、癌で余命幾ばくも無い父親への見舞いに行く度貰える「御車代」を生活費に当てる日々。
 駅前のロータリーで「死んでもいいかも」とぼーっとしていた一雄の目の前に、ワインカラーのワゴンが停まる。中に乗っていたのは橋本さんと健太くんの親子。五年前事故で死んで以来、一雄のような人物を乗せて走っている、と言う。ワゴンは一雄を「たいせつなどこか」へ連れて行く。
 それはこんな事態に陥る分岐点だった。スクランブル交差点で見知らぬ男と二人連れの妻を見かけても、見間違いだろうと追いかけなかった過去。変わらぬ行動をとろうとした一雄を、ある男が引き止める。それは若い日の父だった。
 故郷で金貸しを始め、おとなしい一雄を歯痒がって乱暴な言葉で発破を掛けるばかりだった父。一雄は中学に入った頃から父親が苦手になり、大人になっても仲違いをしたままだった。何故か今の一雄と同年代の父は、一雄の今の状況を知っており、一雄と共に過去を巡る。
 12月、模試から帰って来る広樹を迎えに行き、父と三人で中華料理を食べてゲームに興じる。受験一ヶ月前、公園で人知れずいじめ相手の名前を書いたペットボトルに石をぶつけていた広樹を見つける。何とか未来を変えたくて息子と話し、妻と触れ合う一雄。父親にもようやく自分の想いを語ることができる。やがて、一雄がワゴンを降りる時が来る。…

 毎日放送ちちんぷいぷい』で西アナウンサーが「号泣しました」と言っていた作品。さて、私も泣けるかな、と借りてみました。
 読み始めてすぐ思いました、これは私は泣かないかもしれない。…で、やっぱり泣きませんでした。
 父親と息子の物語。お互い親子としては理解できなかったけれど、一人の人間として見た時、ようやくお互いの気持ちを認め合える。父親と僕、僕と広樹、橋本さんと健太くん。ずっと繋いでいくもの。
 これはやっぱり男の人の話ですね。いい話だとは思うけれど、何かにつけ思い出すような、ターニングポイントになるような作品には、私にはならなかった。でも、男の人にはなると思う。私は梨木香歩『裏庭』のすごさが、男の人には根本的な所ではわからないんじゃないか、と思っているのですが、それと同じ理由。『裏庭』は、ある種の女の子には、福音書になる作品だと思っているので。