読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

幸福な食卓 瀬尾まいこ著 講談社 2004年

 一人の少女・中原佐和子の中学から高校までの生活を、家族を中心に描いた連作短編集。

『幸福な朝食』
 毎朝、必ず揃って朝食を取る中原家。佐和子が中学二年になる春休み最後の日、お父さんが突然宣言する。「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」。佐和子の家では、家族の重大宣言は必ず朝食の場でされる。兄の直ちゃんが大学進学を止めて農業を始めると言い出したのも、母さんが家を出ることを決めたと言い出したのも、朝食の場でだった。
 小さい頃から評判の天才児だった直ちゃんはあっさりその提案を受け入れた。父さんは勤めていた中学校を辞め、薬学部目指して受験勉強を始める。やがて梅雨の季節、佐和子の調子が悪くなる。「あれ」以来、毎年のことだけど。

『バイブル』
 父さんは受験に失敗し、佐和子は中三になった。直ちゃんが連れてきた彼女・小林ヨシコは派手で下品で、全く気に入らない。高校受験に備えて通い始めた塾で、佐和子は妙に自分に敵対心を抱く少年・大浦勉学に出会う。明るく単純な大浦君のおかげで、今年の梅雨は何とか乗り越えられそうだ。

『救世主』
 大浦君と頑張ったおかげで、佐和子は第一志望の高校に入れた。でもまとまりのないクラスの学級委員を押し付けられ、「いい子ぶってる」と陰口を叩かれてかなり居心地が悪い。
 一方、何に対しても真剣にならない直ちゃんが目覚めた。きちんとした生活をして、小林ヨシコとも真面目につきあおうとする。

『プレゼントの効用』
 大浦君が新聞配達を始めた。佐和子にクリスマスプレゼントを買うためらしい。佐和子はお返しに、手編みのマフラーを編み始める。クリスマスの日、大浦君のバイト最後の日、思わぬ事態が二人を襲った。…

 瀬尾さんの作品は『図書館の神様』に続いて二冊目です。こっちの方が断然よかった。電車の中で泣きそうになりました。…何かこんなことばっかり言ってるな(笑)。
 当たり障り無く暮らしていた家族に修羅場が訪れるのかしら、と思ってたらそんなことはないのね。腫れ物に触るかのような家族の生活。これはこれで優しい…のかな。
 ただ、相変わらず、細かい所に違和感を感じてしまった。本なんか読んだことないのに国語教師になった『図書館の神様』の主人公ほどではありませんが(そんな人がいきなり夏目漱石を面白く読めるか、って私は無理だと思う)、初めての編み物がそんなに上手く行くはずがないだろうとか(編み目が揃わないからマフラーの太さががたがたになるんだよ、それ誤魔化すために筒状にしてボンボンつけたりしたんだよ・苦笑;)、佐和子立ち直り早すぎるだろうとか、突っ込みたいところは結構ありました。『救世主』でのクラスばらばらの様子なんか、高校生、しかもそこらで一番の進学校であれは無いんじゃないかなぁ。実際、私が連想したのは自分が中学二年の時のクラスでした。大浦君とのつきあいもどこまでのものなのか、回想シーンまで解らなかったし。
 何か、あと一歩。詰めがどこか甘い気がして仕方ない。文句無く感動させて欲しいです; …でも泣いたんですけどね(笑)。