神様がくれた指 佐藤多佳子著 新潮社 2000年

　辻牧夫はスリでぱくられて一年二ヶ月くらい込んだ。勤め上げ漸く出所して乗った電車の中、迎えに来てくれた隣家のおばさん・早田のお母ちゃんの財布が抜き盗られる。高校生位の少年少女たちの連携プレーだった。その見事な手際に惹かれながらも上手くしてやられてしまった事に苛立つ牧夫。主犯の少年を追いかけて捕まえるが、反対に右腕の関節を外されてしまう。
　――このままでは済まさない。だが痛さのため動けない。
　彼を助けたのは小柄な青年・昼間薫だった。占い師・マルチェラとしてそこそこ稼いではいたものの、ギャンブル癖が祟って家賃を滞納、借家・三沢屋敷を追い出されかけていた昼間。辻はお礼として家賃を肩代わりし、昼間は「行き先がないのなら」と同居を持ち掛ける。
　牧夫はスリの少年たちを捜すが、なかなか見つからない。仕方なくグループで仕事をしている古馴染み・西方親分に助っ人を依頼。西方は偶然それらしい少年を見かけて話し掛けるが、駅で振り切られ、大怪我を負う。少年の顔は西方の昔のスリ仲間・竹内の顔にそっくりだった、多分ヤツの息子だろう。辻は竹内を尋ねて大阪に向かう。
　一方占い師・マルチェラの元へ、女子高生・永井が相談にやってくる。あまりに不吉なカードばかりが並ぶこと、怯えて切羽詰った少女の様子が気に掛かり、昼間は放っておけない。永井も他に頼る人がおらず、頻繁に昼間を訪ねる。そして大阪から帰ってきた辻と出くわす。
　辻を見て逃げる永井、追う辻と昼間。スリ仲間のアジトを突き止め、彼らをマークしていた警官と共に乗り込む。
　リコこと永井、腕力自慢のヤス、美人のカズ。そして主犯のハルこと竹内。追い詰められた孤独な少年少女たちが反撃する。辻の幼馴染・早田咲まで巻き込んで、長い夜が始まる。…

　あちこちの書評で誉められている作家さんなので読んでみました。
　…この作家さん、好みかも。人によってはあざといと思われるかもしれない設定ですが、私にはアリでした。
　喘息持ちの咲ちゃんの、まぁ健気で可愛いこと！　辻の不器用さ、じれったさとかも「くぅーーっ」って感じでじたばたしてしまう（笑）。辻くん、そんなに手先が器用なら手品師とかやってみればいのに。…やっぱり爽快感ないかなぁ。
　ただ、細かいこと言うなら。咲ちゃんの喘息治療、2000年ならもう吸入メインになってたと思うんだけど。昼間の名字も別のものにして欲しかったなぁ。「昼間は～」って文章が出るたびに時系列の昼間のことかと思ってややこしかったです。
　この終わり方には不服な人もいるかもしれない。でもまぁ私はこれでもいい。
　とりあえず、この人の別の本も読んでみたいと思いました。
　…でもこの作品、友人のMっちゃんやYさんなら絶対ヨコシマな目で見るだろうなぁ（笑）。