読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

錦絵双花伝 米村圭伍著 新潮社 2001年

 シリーズ三作目。

 寛延四年(1751年)、紀州秦栖藩。徳川家康から下賜された宝刀・垢付丸が盗まれた。手引きしたのは正室・於煕つき奥女中・薄墨。小間物屋に扮した田沼意次の手先に情を移して犯した過ちだった。体内に子を宿していた薄墨は牢獄で月満ち、ようよう脱獄した山中で自分の命と引き換えるように女の子を産み落とす。
 女の子はお藤と名付けられ、秦栖藩の家老・里美兼継の娘として育てられた。秦栖藩がお取り潰しになって後、垢付丸を捜して諸国を転々、とうとう江戸に流れ着く。そこで母譲りの美貌が評判になり、勤め先の楊枝屋は目当ての男衆で門前列を成すほど。絵師・鈴木春信の手によって多色刷りの錦絵になると、もう一人の小町娘・笠森お仙と共に江戸の双花と歌われる。
 彼女に目を付け、手を出そうとするのは田沼意次の放蕩息子・田沼意知。お藤の義兄・新之丞から彼女の出自を聞き、垢付丸を餌にお藤を妾にしようとする。お仙としては黙ってはいられない。くノ一の本領発揮とばかり、意知から垢付丸を奪おうとするが、意知と共に妖刀の光を浴びてしまう。
 体に異常を感じて伏せるお仙。意知はまだお藤に執着、攫って辱めようとする。彼女を救おうと、お仙はお藤の元に飛ぶ。果たしてお仙は間に合うのか、お藤との因果とは何か。…

 前作の、烏のように色黒で、元気一杯江戸の街中を駆け巡るお仙が好きだったので、いきなり美人になってしまったこのお仙には違和感ばりばりでした。しかも今まではそれでもそこそこ地に足が着いた話だったのに、今回、伝奇小説に早変わり。設定の虚と実の入り交じり具合が変わってる気がする。決して面白くない訳ではないんですが、このシリーズとして出されるとまず戸惑いから入ってしまう。でも前作から「笠森お仙」て名前がついてた以上、作者はそうする意図があったんだろうなぁ。詳しい人は「…あ」って思い当たってたんでしょう。浅学にして私は知らなかったんですが。
 話の展開は読めてしまう所多々あるんですが、安定して面白かったです。…でもお仙ちゃんがなぁ;