読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

かおばな憑依帖 三國青葉著 新潮社 2012年

 第24回ファンタジーノベル大賞 優秀賞受賞作品。

 徳川吉宗の時代。
 出店でごった返す浅草寺で挙動不審者に襲われていた田沼龍助(意次)を助けた桜井右京は、それが縁で龍助の姉・盲目の美也と出会い、恋に落ちる。江戸では怨霊退治の策が練られていた折、右京は美也との結婚を条件に、京の都へ行ってとある若後家を誘惑するよう申しつけられる。
 若後家の名は千姫、吉宗が将軍職に登るために殺した尾張の円覚院の娘。怨霊の正体を円覚院と見極め、おびき寄せるための方策である。折しも美也の勤める養生所で毒草が燻され、美也は瀕死の状態に。美也の敵討ちのため、右京は京都に向かう。だが怨霊は強く、思うようにことは進まない。追い詰められた寸での所で、右京はいきなり現れた母・茅野に救われる。茅野は右京を心配して、こっそり江戸からついて来たのだという。柳生十兵衛の血を引く茅野は剣の腕も実は一流、幽体離脱して相手が寝ている状態なら他人を操ることまでできるという猛母ぶり。とりあえず右京は茅野と共に江戸に戻ることにする。
 尾張の間者のみならず、柳生家の跡目争いにまで巻き込まれ、狙われる右京と茅野。江戸に帰ってみれば、江戸の町は大騒ぎ。何でも毒の種を持つ変わり朝顔が江戸中にばらまかれ、庶民がばたばたと毒に当たって倒れたり、気が触れたりしているのだとか。
 事前に尾張家で、変わり朝顔が栽培されていることを知っていながら事件を防げなかった。吉宗の落胆は凄まじく、尾張家に取り憑いた怨霊を退治するために6人の刺客を選ぶ。吉宗の亡き母・浄円院、龍助に仕える柾木信吾、町の学者青木文蔵と右京、その母、神の使いの象まで。
 果たして、円覚院と千代姫の怨霊を相手の闘いが始まる。…

 …さて、何と言っていいものやら。
 やっぱり私の好みとしては、『絶対服従者(ワーカー)』の方が面白かったです。
 こちらの作品は、ファンタジーなのかなぁ。伝奇物と言った方が近いような。登場人物みんなかっ飛んでて、会話の寄り道も多くて、何だかうるさくも感じてしまった。ここまでくると何でもありだよなぁ、とどうも素直に乗り切れない。乗り切れたら面白がれただろうに、とは思うんですけどね。
 で、これは個人的な好みなのですが。いかにも続編ができそうなラスト、ってのがどうしても気に入らない。ここ近年の傾向なんでしょうけど、シリーズ化とか考えるなよ、この一作で完結するような、渾身の一作を応募して来いよ、と眉を顰めてしまうんですよね。
 …で、またこのシリーズの短編とか出るんだろうなぁ。何だかなぁ。