読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

風流冷飯伝 米村圭伍著 新潮社 1999年

 第五回小説新潮長編新人賞大賞受賞作。

 時は宝暦十四年甲申春、所は四国讃岐の風見藩。
 桜色の羽織も鮮やかな江戸の幇間・一八はこの城下町の不文律、「男は城を左回り、女は右回り」を聞いてその不便さに呆れ果てる。それを決めたのは先々代藩主・光猶院。偶然知り合った冷飯食い・飛旗数馬から聞いた所によると、光猶院様は城の大手門と搦手門を逆にして、「武士は頬かむりをしてはならない」「家長および長男は囲碁も将棋も嗜んではならない」等々、風変わりな決まりを次々作り、人々はそれにへいへいと従っている様子。そんな折、現藩主・時羽直重公は、新たに「将棋所」なる役職を設ける、と言い出す。どこかに婿入りするしかない武家の次男・三男坊の冷飯食いは、新しい家禄が貰えるかも、と大騒ぎ。一八は江戸で流行っていた手毬唄を思い出し、これには何か裏があるのでは、と勘繰り始める。果たして、将軍徳川家治、老中田沼意次も絡んだ一大プロジェクトが密かに進行していた。
 見るが道楽、一向に物事に参加しない飛旗数馬、体は大きいが気は小さく、手先ばかりが器用な鳴滝半平太、一日中釣り糸を垂れる池崎源五、将棋の得意な美少年・榊原拓磨。呑気な藩の呑気な、でも真剣な冷飯食い達の騒動に巻き込まれる一八。一八が江戸から遠く離れた風見藩にいるのにも理由があった。…

 連作短編の形を取った長編。デビュー作だそうですが、作りが上手いなぁ。読後感も気持ちいい。少々品のない記述もあるけど、これだけ明るく書かれると「もう、仕様が無いねぇ」で済んでしまう(笑)。手毬唄の解釈は、ちょっと強引ではないかとも思いましたが。
 お茶にちょっと醤油を垂らしたものが十六文。落語の「時うどん」も確か十六文でしたよね、時代とか藩の物価とかにもよるんでしょうが、何だか高価いなぁ。一八が食べてた蕎麦はいくらだったんでしょう。…いや、讃岐なんだからうどん食えよ;