読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

今宵、嘘つきたちは影の幕をあげる 紅玉いづき著 ポプラ文庫ピュアフル 2023年

 『今宵、嘘つきたちは光の幕を上げる』との二部作。
 少女サーカス創成期を描く。ネタばれあります、すみません;

 第一幕 黄金のマリナ≪入団オーディション≫
 大地震から一年後、東京・湾岸エリアにはカジノと少女サーカスが誕生。その開発時、生徳会グループの建設現場で責任者が自殺した。それは女子高生・諸星マリナの父で、彼女はその謎を探るうち、少女サーカスの団員募集を知る。真相を知るためこの街で生きると決意し、空中ブランコ乗りを志す中、権力者である正徳会代表・鷲塚と出会う。
 常に少女サーカスに否定的に動く鷲塚片理。カジノ設営反対派からも数々の過激な抗議運動を受け、少女サーカスはお披露目もままならない。このまま潰されそうな危機感を覚えた少女たちは、仲間たちとゲリラ公演を行い、熱狂的なファンを得る。

 第二幕 金魚姫は永遠をうたう
 少女サーカスは歌姫を外部から迎えた。元アイドルグループのセンターを務めた はまな有葉、明らかな口パクで「金魚センター」と揶揄された少女。ほぼ決まっていた前任者の契約トラブルに乗じて、いきなり祭り上げられた。スタッフから疑問視され、前任者からも降板するよう迫られ、それでも有葉は舞台を降りない。歌唱の入っていない音源を本番で流されても。

 第三幕 チャペックとカフカ
 猛獣使いのカフカは猛獣と共に異国から迎えた。たどたどしいながら日本語を話す彼女ズーハンは、全く話せない妹ミンランを連れていた。パントマイムのチャペックこと知多彩湖は、何時の間にやら彼女たちの世話役に回って行く。「欲しいもの」を訊かれて、「本」「勉強」「学校」と答えるミンランを大切に思う彩湖。だが、ズーハンが動物密輸入に関わったとされて降板、急遽ミンランが二代目カフカを襲名することに。そして悲劇は起こった。

 第四幕 黄金のマリナ≪退団記者会見≫
 サーカスの運営体制が代わって、新しいマネージャーがやって来た。曲芸学校も作られることになった。サーカスはずっと盛況で、贔屓客に買われるエクストラシートも満席。ブランコ乗りのサン=テクジュペリことマリナはずっと公演に出ずっぱり、腕に限界が来ているというのに。変わらず父の死の真相を知りたいと思っていた彼女は、自分を食い物にしようとしている男たちから助けてくれた鷲塚を、そのことを利用して、陥れようとする。…    (裏表紙の紹介文に付け足しました)

 そうか、こう来たか、の二部作目。
 サーカス創成期は特に、搾取されるばかりに見える少女たち。健気でしなやかな、時には愚かな行動、底辺に流れる強さ。サーカスが自分たちのためになるように、熱狂的なファンの手に委ねる。少女たちのその後を、手を差し伸べる存在に頼る展開が多い気はしましたが、それも彼女たちが繋いだ、作り上げた縁ってことなのかなぁ。第三幕『チャペックとカフカ』は、高村薫の『李歐』を連想しました。あれも密輸がらみの話でしたし。
 二部作と銘打ってはありますが、まだお話は作れそうなんですけど。初代から『~光の幕~』までの間を、埋めようと思えばまだまだできそうですし。でも辻褄合わせるの大変かもなぁ。