ネタばれになるのかな、すみません;
執筆期間15年のミステリ・ロマン大作『鈍色幻視行』の核となる小説、完全単行本化。
「本格的にメタフィクションをやってみたい」という著者渾身の挑戦がここに結実…!
遊廓「墜月荘」で暮らす「私」には、三人の母がいる。孔雀の声を真似し、日がな鳥籠を眺める産みの母・和江。身の回りのことを教えてくれる育ての母・莢子。表情に乏しく、置き物のように帳場に立つ名義上の母・文子。ある時、「私」は館に出入りする男たちの宴会に迷い込む。着流しの笹野、背広を着た子爵、軍服の久我原。なぜか彼らに近しさを感じる「私」。だがそれは、夥しい血が流れる惨劇の始まりで……。
謎多き作家「飯合梓」によって執筆された、幻の一冊。
『鈍色幻視行』の登場人物たちの心を捉えて離さない、美しくも惨烈な幻想譚。 (出版社HPより)
『鈍色幻視行』内で謎多き作家 飯合梓が書いたとされる幻想小説。装丁もそれを模して、中表紙や奥付が二重に付いてる凝りようです。ふふふ、嬉しいww
面白かったです。時代掛かった舞台風景、演出。いかにも外連味たっぷりに描かれる遊廓、登場人物。『鈍色幻視行』で心中事件を起こした男女、ってのは和江と義弟の役の人なのかな、それとも久我山と莢子なのかな。なるほどこれは映画化よりも舞台化の方が映えるわ、実際やってみたい舞台人出て来そうですね。どちらにしろ、語り手となる主人公が肝ですね。違和感なく少女を演じられるか。舞台ならまだしも、映画ではバレてしまいそうですが。
そう、『鈍色幻視行』でされていたネタばれを、読み進めるうちわたくしすっかり忘れておりました!(爆!) 近年嘆いていた物忘れの酷さが、ここにきてこんなプラスに出るとは! クライマックスで主人公の性別が明かされて、「そういやそうだったわ!」と新鮮に驚いてしまいましたよ、老化ばんざい!(笑)
この作品を脚色するに当たって、語り手を女性にするとまるでお話が変わってしまう、というのもよく分かりました。『鈍色幻視行』の答え合わせもできて得した気分です(笑)。
どちらの作品を先に読むか、ってのは人それぞれでしょうが、私はこちらを先に読んだ方がよかったかもな、どんでん返し忘れてたとはいえ(苦笑;)。こちらを読んで、『鈍色~』読んで、さらに『夜果つる~』を読み返してほくそ笑む。これが正解な気がします。さらに『鈍色~』を読み返せたら完璧ですね、ちょっと長いけど、拾い読みだけでも。