読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

白銀騎士団(シルバー・ナイツ) 田中芳樹著 光文社 2022年

 田中芳樹、新シリーズ…になるのかな。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 舞台は1905年。ジョセフ・アーネスト・フィッツシモンズはケンブリッジ大学卒の24歳、英国貴族、准男爵(バロネット)。惚れっぽいのと金銭感覚のずぼらさが玉に瑕、インド人のゴーシュと中国人の李を従者に、アイルランド人のアニーをメイドに雇い、亡き父親の跡を継いで怪物退治っぽいことを生業にしている。
 今回の依頼主は南アフリカ帰りの元軍人、サー・グレゴリー・ケント。家族共々ボーア人に狙われているから調べて欲しいと言うもの。差別主義も甚だしい依頼人の言動にムッとして250ポンドもの手付金をふっかけたら、あっさり支払われてしまった。仕方なく調査に乗り出すが、その後の連絡がない。本人の屋敷に行っても追い払われ、何故かフィッツシモンズ家が異形の何者かに襲撃された。暴漢曰く「『ナイルの王者』を寄越せ」――だが、ジョセフには何のことだか分からない。どうやら、旅道楽だった父親と関係があるらしい。
 大英帝国があらゆる手段を講じて世界中に手を伸ばしていた時代。一触即発、世界戦争が引き起こされるかもしれない事態に、ジョセフやそのお目付け役たちも巻き込まれようとしていた。…

 プロローグ的に別のエピソードが一つ書かれていて、それを見る限り『薬師寺涼子』シリーズの20世紀初頭イギリス版、って感じなのかしら、と思ってたら(銀の弾が効く異形とか出てくるし)、本編がっつり論理的でした。
 博覧強記の田中さんの本領発揮、1900年代初頭のイギリスを背景に、リベラルで憎めないお坊ちゃん准男爵があたふたと事件解決に励みます。脇をサポートするインド人と中国人がいい感じ、そう、田中さんの作品の特徴の、皮肉交じりの軽口の叩きあいってのは好きだったんでした。イングランド人に対する罵詈雑言「全世界の嫌われ者! 阿片の密売人! 遺跡荒らしの墓泥棒! 味覚オンチ!」には思わず吹き出しましたよ(←おい;)。
 当時のイギリスの世相ってこんな感じだったんだとか、こんなものが流行ってたんだとか、これも同年代だったのかとか、庶民の平均収入に至るまで色々教えて頂きました。
 羽住都さんの装画もいい感じ、渋くて品があって。
 「こんな所に回想入れる??」と構成的に首を傾げる所はありましたが、面白かったです。いや、期待値がそんなに高くなかったせいかもしれないんですけど(←おい;)。