読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

下町ロケット ヤタガラス 池井戸潤著 小学館 2018年

 『下町ロケット』シリーズ4作目。
 ネタばれあります、すみません;

 宇宙(そら)から大地へ――。
 大型ロケット打ち上げの現場を離れた帝国重工の財前道生は、準天頂衛星「ヤタガラス」を利用した壮大な事業計画 無人農業ロボット「アルファI」を立案。自動制御システムの開発者 北海道農業大学の野木教授が佃の同窓だったこともあり、佃製作所は新技術トランスミッションを携えて、共にトラクターの製造に乗り出すが、思いがけないライバルが現れる。
 因縁深きギアゴーストとダイダロス、それに野木から自動制御の技術を盗んだ疑いがあるベンチャー企業キーシンが中心となり、他中小企業300社以上、何故か制作会社の北堀企画まで加わった連合チーム。彼らは小型のトラクター「ダーウィン」を、それぞれの得意分野を持ち寄って作り上げようとしていた。
 一丸となって対抗しなければならないのに、帝国重工社内に不協和音が鳴り響く。手柄を独り占めしたい取締役 的場が財前の案件をかすめ取り、しかも帝国重工がやり易いように規格を変更、トラクターは大型化した。とばっちりを喰って、佃製作所は蚊帳の外に追い出されてしまう。だが、試作機の失敗により、再び佃製作所にお声がかかった。佃は元ギアゴーストの島津を迎え、トランスミッションの改良に力を入れる。
 一方、「ダーウィン」プロジェクトにも齟齬が産まれていた。元々島津が設計していたトランスミッションは完璧ではなく、徐々に作動不良が出始める。原因を擦り付け合う伊丹たち、折悪しく、的場からの下請けへのパワハラが重なり、プロジェクトを抜ける企業も現れる。やがてそれはマスコミ沙汰になり、帝国重工への訴訟にまで発展、的場は失脚した。
 災害に見舞われた殿村の田んぼを試験場として、「アルファI」は着実に改良を重ねていく。発売台数でロケットスタートを切った「ダーウィン」だったが、故障の多さから評判が悪化し、リコールまで囁かれるようになっていた。…  (出版社紹介文に付け足しました)

 島津さん、いいなぁ。本当、価値観がブレない。他の人が復讐だの対抗心だのプライドだのに囚われる中、一人利用者の方を向いている。そう言えば、前作で佃製作所の面々に、本当のニーズとは何か悟らせたのもこの人だったよなぁ。スレンダー美女じゃなくてちょっとぽっちゃり、ってのもいい(笑)。
 佃さんの最後の決断は、ちょっと甘いんじゃないかなぁと思う所もあり、それでこそ佃さんだと思う所もあり。ユーザー重視の島津さんの考え方が指針になった一面もあるのかな、舐められないといいんだけど。まぁライセンス料ちゃんと貰えばいいか。伊丹社長も目が覚めたことでしょう。
 今回、そんなに大きなどんでん返しはなかった分、積み重ねたものの大きさ、大切さを味わえた一冊でした。