読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ダブル・ジョーカー 柳広司著 角川書店 2009年

 『ジョーカー・ゲーム』続編、連作短編集。

 ダブル・ジョーカー
 軍の内部に、D機関への対抗組織が作られた。中心人物・風戸陸軍中佐は、英国びいきの元外交官・白幡が軍事機密に当たる『統帥綱領』を盗読した容疑について調べるよう指令を受ける。この任務で成功した方が、正式な間諜機関になる。風戸は白幡の書生・森島に目をつけ、情報を流させた。 

 蠅の王
 慰問団「わらわし隊」の中にスパイ・ハンターがいるらしい。中国の最前線で、モスクワに情報を流していた軍医・脇坂は秘密裏に情報を受け取った。疑心暗鬼で芸人たちを見つめる脇坂。この中の誰が自分を追い詰めようとしているのか、しかし自分が考えた通信手段は見破られる筈がない…。

 仏印作戦
 フランス領インドシナ連邦にて。高林は通信士として現地に派遣された。陸軍の暗号電文を海軍の無線装置を使わず仏印側の施設を使って送信するという非合理性に、陸海軍の仲の悪さを身を持って感じる日々。ある日彼は何者かに背後から襲われ、永瀬と名乗る男に救われる。永瀬は自分は陸軍少尉で極秘任務に就いており、高林にとある電文を打電してほしい、と依頼して来る。

 柩
 ドイツ、ベルリン郊外で起きた列車事故で、一人の日本人が死んだ。身辺のあまりの隙のなさに、彼がスパイであることを確信するヴォルフ大佐。ヴォルフ大佐には二十二年前、彼とよく似た男をスパイ容疑で捕まえて、まんまと逃げられた苦い思い出があった。

 ブラックバード
 アメリカ、ロサンゼルスで。バードウォッチングを趣味とする仲根は、資産家の令嬢メアリーと親しくなり結婚した。日本人差別が徐々に酷くなって行く中、スパイである彼に外務省外交官と接触するよう指示が下りる。落ち合って驚いたことに、相手は仲根の腹違いの兄だった。優秀な兄の姿に、仲根は我知らずとらわれていくことになる。…


 D機関完結編、になるんだろうなぁ。
 胸がすくような活躍から一転、戦争が起きることによっての崩壊、壊滅。欧米での日本人は、普通目立ちますもんね。こんな終わり方があるんだなぁ。
 結城中佐の過去のエピソードもちらりと出てきましたね。隻腕の理由も明らかになりました。戦中戦後、結城中佐をはじめとするD機関員はどうしたんだろう。何だか気になる所です。
 いや、面白かったです。