読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ゆっくり十まで 新井素子著 キノブックス 2018年

短編集。

 

 第一章 天下無敵の恋する乙女

ゆっくり十まで

 お互い一目惚れした運命の相手は温泉好き。だけど自分はお湯に十秒も浸かっていられない。そして私は、前世を思い出してしまった。

 

謎の男

 地下鉄のエキナカにあるパン屋でバイトをはじめた「私」。そのうち、短時間に改札を5往復もする男を見かけ、気になって気になって仕方がない。 

 

コンセント

 認知症になったお祖母ちゃんに、恵美はこっそり葉書を頼まれる。相手は幼馴染の、おそらくお祖母ちゃんの初恋の相手。「お祖父ちゃんには内緒ね」と先に亡くなったお祖父ちゃんを気にする可愛らしさ、でも相手から返事が来たのはお祖母ちゃんが亡くなってからだった。

 

ここは氷の国

 結婚した相手とは話題も食事の好みも、本当に相性がいい、と思う。だけど旦那は無類の暑がりだった。冷房の設定温度は20度、冬の方が過ごしやすいくらい温度が合わない。そして10年。

 

 第二章 神様、どうかお願い

初夢

 八百万の神様が話し合って、お参りに来た人に「もう会えなくなった愛するひと」と夢で会わせてやることに。そしてある人は亡くなったおばあちゃんの、二十年前に亡くなった我が子の、ある人は若かりし頃、旦那からのプロポーズ場面の初夢を見る。

 

ぱっちん

 しーちゃん(3歳)は「ぱっちん」が大好き。スイッチを押して遊んで、でもママはそれで道具が壊れないかとても心配。大雨のある日、留守番を頼んでいたおばあちゃんが倒れてしまった。ママは一人家に残されたしーちゃんが心配で…。

 

王妃様とサミ

 幼い王様に嫁いできた王妃は、サミという魔物に取り憑かれてしまった。でも王妃にとってサミは仲のいい友達で…。

 

神様、それはどうなんだろう

 トマト缶の蓋が開かなかったことから、「あたし」はハンドグリップを買ってきて握力を鍛えることに。ところがある日、目の前に「ハンドグリップの女神」が現れた。

 

百二十年に一度のお祭り

 百二十年に一度咲く竹の花に寄せて。

 

 第3章 されど、愛しい人間くん

よろしく頼むわ

 何の因果か、「俺」猫はTVの中に入って行けるようになってしまった。幽霊猫として話題になる中、ある日飼い主が風呂場から出て来ない異常事態に出くわす。

 

体重計

 語り手は、とあるスポーツクラブの女性シャワー室前に設置された体重計。ある日好感の持てる女の子が現れて、でも彼女は行き過ぎたダイエットを敢行し始めた。

 

癒しの水槽

 ハードワークに疲れる旦那のために、癒しとして熱帯魚を飼った。休日に水槽に貼り付いて魚を眺める旦那、でも魚側から見ても思う所はあって…。

 

あなたの匂いに包まれて

 自分の鞄におしっこをかける猫。猫の気持ちを思い遣り、半ば諦める飼い主に対し、猫には真の目的があった。

 

守護者

 大学のサークルのビンゴ大会で賞品になって以来、「僕」消火器は十和子ちゃんの家についてきた。引っ越しの度、結婚後の新居にまで。十和子ちゃんのお嬢さんが小学生になってからも。そしてある日、お嬢さんの危機を救うことになる。

 

ひゃっほうっ!

 「相棒」が免許を返納することになった。俺は野良車になる決意をして、家を出る。…

 

 

 新井素子さんの掌編集。う~ん、この人の文章は相変わらず頭に残る(苦笑;)。

 新井さん、今でも旦那さんと仲いいんだな、らぶらぶなんだな、としみじみ思ってしまいました。本当、ほっこり(笑)。

 無機質なものに気持ちを添わせる、って付喪神的な視点を、新井さんは本能的に持ってるんだろうな、とも思いました。でもこれは今更な感想かも。

 面白かったです。