読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

常設展示室 Permanent Collection 原田マハ著 新潮社 2018年

 短編集。

 群青 The Color of Life
幼い頃メトロポリタン美術館に魅せられて、憧れのまま何とかそこへの就職を叶えた美青。立ち上げた企画、障害を持つ子供に向けた教育プログラムは大反響、だが美青にもある異変が忍び寄っていた。

 デルフトの眺望 A View of Delft
なづきは現代アートを扱う大手ギャラリーの営業部長で、世界中を飛び回っている。軽い認知症の入った父親の介護は弟のナナオに任せきり、だが父親の状態を見て、ナナオと二人で向き合う決意をする。

 マドンナ Madonna
世界中を飛び回るアートディーラーの橘あおい。アラブの大富豪との商談をまとめられるかの瀬戸際で掛って来た老母からの電話にイラつくような日々。寂しい母の想いも分かっている筈なのに。

 薔薇色の人生 La Vie en Rose
「パスポート窓口」で知り合った男性は、フランス語が堪能な小洒落た老紳士だった。彼の語る境遇に、心惹かれる多恵子。

 豪奢 Luxe
下倉紗季は画廊に勤めていた時、見初められて谷地哲郎の愛人になった。IT起業家で、アートを買い漁る谷地。いっそ手あたり次第とも言える買い方に眉を潜めつつ、贈られるブランド品を身に纏い、豪奢な女になって行く。

 道 La Strada
「新表現芸術大賞」の審査員として、翠は一つの作品に釘付けになった。遠い兄との記憶、大学の頃道端で出逢ったとある男性の記憶がよみがえる。…


 親の介護問題だったり、ダメ男に引っかかったり、大病に向き合ったり、という人生の岐路に出会うアート。踏ん切りがなかなかつかないことに対する後押しを、アートがそっとしてくれる。
 そういう作品に、私はまだ会ったことがないけれど、そういう経験をした人を羨ましいと思う。爆笑問題の太田さんがピカソの絵に感動したように、オードリーの若林さんが岡本太郎の芸術に救われたように。
 感性がない分、知識に頼っちゃうんだよね(苦笑;)、せめて品性を忘れないようにしよう、と『豪奢』のIT社長を見て思いましたよ。