読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

裁く眼 我孫子武丸著 文藝春秋 2016年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 漫画家になり損ね、浅草の路上で似顔絵を描いて生計を立てている袴田鉄雄。あるとき、彼の腕前を見込んだテレビ局の人間から、「法廷画」を描いてほしいという依頼が舞い込む。注文通り描いた絵が、テレビで放送された直後――鉄雄は頭を殴られて昏倒する。彼は一体、何を描いてしまったのか?
 彼が描いたのは世間で話題の事件、稀代の美女佐藤美里亜が、二人の男性に散々金品を貢がせた挙句、練炭自殺を装って殺してしまったとされる裁判。美里亜は罪状を否認している。
 美里亜に惹かれ、周囲の人間曰く「本物以上に美人に描いている」と言われてしまった鉄雄。傍聴席で知り合った同業者 聖護院桜は鉄雄の絵に興味を持ち、何かと話しかけて来る。襲われた鉄雄を本気で心配してくれている様子だったのに、鉄雄は思わず突き放す。翌日、桜は自宅で死体となって発見された。
 首吊り自殺のような様相だったが、鉄雄には信じられない。鉄雄を襲った人物が、同じように彼女を殺したのだろうか。やがて、美里亜の裁判にも大きな衝撃が走る。偽装自殺の証拠の一環とされた、不自然な掌紋のついたグラスが、検察側によって捏造されたものではないか、と疑問が提示されたのだ。
 鉄雄の才能を無条件に信じる姪の蘭花は、TVで放送された鉄雄の法廷画に、犯人を示すヒントがあるのではと考える。果たして、絵を見た年配の警官は奇妙な反応をする。鉄雄が襲われた理由とは。…
                                           (前半、帯文を写しました)


 我孫子さんの作品だから、絶対前半のどこかで犯人が出てる筈、と思いながら読んだのですが、これは特定できなかったなぁ。
 面白かったです。するすると読めました。この間読んだO・ヘンリーの短編集に、モデルの人物の本質を描いてしまう画家の話がありましたが、それを思い出しました。こちらでは最後に含みを持たせましたが。
 これ、シリーズ化されるのかしら。「法廷画」という目の付け所は、このまま一作限りでは勿体ない気がして仕方がない。続きはできそうな感じなんですけど。