読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

かぎのない箱――フィンランドのたのしいお話―― ボウマン、ビアンコス文/瀬田貞二訳  岩波書店 1963年

 民話集。

 りくでも海でもはしる船
りくでも海でもはしる船をもってきたものに、ひめぎみがつかわされる、とのお触れが出ました。三人兄弟も船を造ろうと森の木を伐り出しにかかりますが、上の二人は、途中で出逢った道端のおばあさんも 杖にすがったおじいさんも無視、結局、折角造った船も運べませんでした。末っ子のノキだけがおばあさん、おじいさんを救い、おばあさんからは銅の呼子を、おじいさんからは立派な船を貰い受けます。宮殿へ向かう途中で仲間になった大肉ぐらい、大酒のみ、大熱さましといだてんばしりと共に、王様の出す難題を解いていきます。

 アンチの運命
とある百姓の家に、赤ん坊が生まれた夜。偶然宿を借りた毛皮商人のアーナスは、その子供がいずれ自分の跡取りになる、との予言を聞いてしまいます。そんな赤ん坊を背負いこみたくないアーナスは、赤ん坊を百姓から引き取った上で、松の木の股に捨ててしまいました。猟師に拾われた赤ん坊はアンチと名付けられ、美しい若者に育ったところでアーナスと再会、アーナスはアンチを亡き者にしようと自分の家への手紙を言伝てますが、途中でその手紙は泥棒によってすり替えられます。かくして、アンチはアーナスの娘と一緒になることに。アーナスはそれでもアンチを追い出そうと、北の国の女王ロウヒへ、「たのしい仕事とは何か」聞いてくるよう頼みます。アンチは遠い北の国目指して旅に出るのでした。

 ユルマと海の神
百姓のユルマは海の神に騙されて、三人の娘を次々に渡す羽目になります。上の二人の娘は、「入ってはいけない」と言われた部屋に入って海の神の怒りを買い、タールの樽に投げ込まれてしまいました。三番目の娘ビエノは、樽の中の姉たちに気付き、部屋にあった「いのちの水」で二人を助けます。そして代わりに「死の水」を「いのちの水」が入っていたびんに注ぎ込みます。ビエノは両親への贈りもの、という口実で姉たちの入った宝箱を海の神に運ばせます。勿論、三番目には自分が入った宝箱を。

 どこでもないなんでもない
カモの化身の乙女イハナを、羽衣を奪うことで妻にしたオンニ。美しいイハナは評判となり、王様は自分の息子にイハナを連れ添わせたいと願うようになります。オンニを邪魔に思った王様はどこでもない国へ行って、なんでもないものを捕まえてこい、とオンニに命じます。オンニはイハナの助言の元、黒い城を三つ訪ねます。そこにいたガマガエルに案内されて、とうとう命ずるままごちそうを出してくれる なんでもないものを連れてくることに成功します。

 かぎのない箱
狩人のカッレは命乞いした雷鳥を三年養い、そのお礼にと遠い北の国へ連れて行かれます。雷鳥は実は王子で、魔法使いのゆがみ丸に呪いをかけられ、雷鳥に姿を変えられたというのです。カッレのおかげでまじないが解けたお礼にと、王子はかぎのない箱をカッレに贈ります。箱の中には立派なお城、何不自由ない暮らしがありましたが、カッレは故郷へ帰ろうとします。しかし道のりは遠く、途中知り合った男が持ち掛けた「あんたが留守の間にあんたの家で産まれたものをくれるなら、すぐに連れ戻してやる」という取引に、うかうか乗ってしまいます。果たして、留守中に産まれていたのはカッレの子供ヤーコでした。カッレは仕方なく大きくなったら息子をゆがみ丸に引き渡す約束をします。
体も大きく、力持ちに育ったヤーコは、自分の自由を取り戻そうとゆがみ丸に会いに行きます。ゆがみ丸の娘インピの協力も得て、ゆがみ丸から逃れます。

 三つめのかくればしょ
旅に出たセベリは、銅の城のじいさんに仕えることになります。じいさんは彼に鍵を渡し、二十四番目の部屋に入ると大変なことになる、と警告します。翌日、セベリが我慢できずに二十四番目のドアを開けると、そこには美しい娘バップがいました。恋に落ちるセベリ。しばらく二人は楽しく暮らしますが、やがてバップがいなくなります。半狂乱でバップを探すセベリ。旅から帰って来たじいさんがバップの姿を現させますが、この先もずっと一緒にいるには、バップが探し出せないくらいセベリが上手く隠れることが必要だというのです。セベリはじいさんの助言を得て、ウサギの、クマの心に隠れます。でもバップはセベリを見つけてしまいます。セベリは再びじいさんの助言を得て、今度はバップの心の中に隠れます。

 かじやセッポのよめもらい
鍛冶屋のセッポ・イルマリネンは、王女カトリーナを嫁にもらうために、そりで海へ乗り出します。王様の出す無理難題を片付け、いよいよカトリーナを手に入れて家に帰る途中、カトリーナは三度姿を消してしまいます。すっかり腹を立てたセッポはカトリーナをアジサシに変えてしまい、自身が作って命を吹き込んだ銅の女と暮し始めますが、結局いやになってしまいます。セッポはカトリーナを元の姿に戻して、家に戻るのでした。…


 う~ん、登場人物の名前がいかにも北欧(笑)。民話はどこの国でも民話らしく、やっぱり失敗は二度繰り返して三度目で成功するのでした。ただ、訳者のチョイスのせいかもしれませんが、他ならば二つ、三つに分けられるような話が一つの話としてまとまっている面白さ。天の羽衣のような話が、北欧にもあるとはねぇ。
 「ゆがみ丸」などというネーミングにしみじみしました。「瀬田貞二訳」の本質を見たような気がして(笑)。