読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

双頭の蜥蜴(サラマンダー) 乾石智子著 講談社 2015年

 この作品を好きな方は、この記事を読まれない方がいいかもしれません;
 ネタばれあります、すみません;

 ニューヨークで生まれ育ったシエラは、幼いころに兄を亡くし、母親との確執に苦しんでいる孤独な少女だった。唯一の友達だったアナベルも交通事故で失った彼女は、鬱々とした思いでマンハッタンの街を歩いていた。そこに不思議な老婆が現れ、トルコ石をシエラに渡す。シエラは石に導かれ、異世界・ヴェレに行き、そこで自分が世界を救いたる存在、<石の司>であることを知る。
 自分が唯一の存在であることを知り、自立する勇気を得ていくまでの、少女の物語。   (紹介文より)

 
 粗筋をちらっと目にした時に、ちょっと?マークが頭をよぎりました。あれ、この作家で現実世界と異世界が舞台? 異世界だけの話ではなく??
 で、読んでみて、やはり違和感が拭えませんでした。これは、大人向けのファンタジーの筈だよね? 児童書の類ではなく??
 児童書ならいいと思う。何か、物凄くフォーマットに則った感じ。それに乾石さんの個性をまぶしました、みたいな。でも、誘惑者として現れるヨルハールの正体も察しがついてしまうし、この作家の前の作品を読んでいる身からすると、どうも物足りない。乾石さん、こういうのはあまり向いてないんじゃないかなぁ。
 例えば、母親との確執についても、母親が実際に吐いた暴言は具体的には書かれない。後半で少しは紹介されますが、言ってしまえばありきたりのよく見かける言葉で、シエラの痛みはあまり私には伝わらなかった。反抗期真っ只中、鋭い皮肉で応戦するという弟の言葉も書かれてないし。この作家さん、そういう言葉を思い付かないんだと思う、多分、根というか性格が良い人、上品な人で。
 現実世界が混じっている分、最後の大ボスとの戦いも、私は浮いている感じがしました。溢れる大時代的な言葉で紡ぐ情景は、今までなら怒涛のように盛り上がった筈だったのに。
 子供が読む、初めてのファンタジーならよかったのかもしれない。作者へのハードルが、私の中で上がっちゃってるんだろうなぁ。石やトンボ玉の表現は相変わらず凄いと思ったんですけど。