読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

大きな音が聞こえるか 坂木司著 角川書店 2012年

 八田泳、高校一年生。そこそこ裕福でいわゆる幸せな家庭の息子、帰宅部、唯一の趣味はサーフィン。凪のように平坦な生活に自分を持て余している。だがそんな矢先、泳は製薬会社に勤める叔父がブラジル奥地に行くと知らされた。さらにアマゾン川の逆流現象=ポロロッカで波に乗れるという情報を聞き、泳は矢も楯もたまらなくなる。――ポロロッカに乗りたい。
 旅費を貯めるために働き始める。縁日の設営、ティッシュ配りを経て引っ越し屋で長期バイト。その時の縁で旅行業者に知己を得、中華料理屋でウェイターに励む。
 親を説得し、甘いばかりだと思っていた親の別の一面を知る。ポルトガル語の勉強をし、サーフィンの腕も磨く。
 漸く辿り着いたブラジルでは、叔父の知り合いの日系人の家に世話になり、ブラジルという国の怖さも垣間見る。
 そしてポロロッカ。CM撮影のために船を出すという一団に参加させて貰い、不味いイタリア料理に唸りつつ、チームの結束力は高まって行く。
 小さな一滴が大きな波紋を生んでいく、等身大の成長物語。…         
                                      (内容紹介文に付け足しました)

 本の分厚さにまず驚きました。今までの坂木さんの作品の中で、一番長いんじゃないかしら。ミステリ仕立てっぽくないのも珍しい感じ。
 面白かったです。思春期の少年の、分かり易い成長譚。
 これまでの坂木さんの作品なら、出だしの引っ越し業者でのバイトのあれこれで一冊の本になっていた筈ですよね。でもまぁ、今回の主人公にはその先の目標がある訳ですから。
 こういう作品の主人公の子って、同年代の友達いるのかしら、って思うようなパターンもあるんですが、そういうフォローもちゃんとしてあるところもいいなぁ、と思いました。そう、だって日常に帰って行く訳ですもんね。
 私はほとんど海外はパック旅行しかしたことありませんが、それでも得られるものは大きい。旅、いいよなぁ。
 それにしても、泳の周りの、というか関わった大人たちが、みんなちゃんとしたいい人なんですよね~。世の中、こんなに素敵な人ばかりではないと思いつつ。でも、お話の中くらいでは、子供が安心して目指せる大人がいてもいのかな。