読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

小暮荘物語 三浦しをん著 祥伝社 2010年

 小暮荘に関わる人々を描いた連作短編集。
 
 シンプリーヘブン
 恋人ができて半年、小暮荘に住む坂田繭の元に、三年前に別れた元カレ・瀬戸並木が現れた。三年間、諸国を歩いて写真を撮っていた、彼女と別れたつもりはないという並木。身勝手な並木に怒りながらも、繭はどこか憎み切れない。

 心身
 小暮荘の家主・小暮は、老年の友人の見舞いを切っ掛けに「セックスをしたい」と強烈に思うようになった。ただ、長年連れ添った妻にそれを言い出す勇気はない。何とか相手を探せないか、とデリヘルという方法に辿り着く。いざ、女性を呼び出してみたものの…。

 柱の実り
 小暮荘の庭で放し飼いされている犬を洗いたい。トリマ―の美禰のささやかな願いだ。通勤に使う最寄駅の柱に見つけた妙な突起物は、美禰を奇妙な人物と引き合わせた。愛犬ミネと共に月に一度、美禰の勤め先に来る前田は、明らかにそのスジの人。何故彼女と前田にだけその突起物は見えるのか。美禰にはその答えが分かる気がしていた。

 黒い飲み物
 繭の勤め先、花屋の店主佐伯には、喫茶店の店主をしている夫の淹れるコーヒーの味は泥の味がする。夜中、ふと出て行ってしまう夫の姿に、浮気の気配を感じる佐伯。常連客の女性も、夫の淹れるコーヒーを飲んで、浮気を確信したという。佐伯は思い切って夫の後をつけてみた。

 穴
 201号室の神崎は、隣室が空き部屋なのをいいことに、そこに侵入して下の部屋の女子大生の生活を覗き見るようになってしまった。女子大生のあまりにもだらしない生活態度に憤りながら、どうしてもやめられない。でも何だか、女子大生に覗き見がばれているような気がする時もある。

 ピース
 102号室の光子は母親と反りが合わない。中学生の頃、光子の不妊症が明らかになって、それは顕著になった。仇打ちのように男遊びに走る光子。いくら遊んでも子供はできない。大学に入って独り暮らしを始めた光子の元に、友人が産まれたばかりの赤ん坊を置き去りにして行ってしまった。この可愛らしい、愛おしい、光子には得られない生き物を置いて。

 嘘の味
 並木は繭が諦めきれず、勤め先のフラワーショップにこっそり様子を見に行っている。店の常連客・北原虹子は、そんな並木を家に誘う。虹子の思惑が読めず戸惑う並木。虹子は、嘘を吐いている人の作った料理を食べると、砂の味がすると言う。…


 うん、やっぱり三浦さんの作品は、私にはちょっと粘度が高い気がする。面白くない訳では決してないんだけど、というか面白いんだけど、好みからはちょっとずれる。
 ユーモアにあふれながら、何だか哀しくて、時に辛辣で、こっそり優しい。
 そうそう、取っ手がある器を両手で包み持つような癖は、私には無いとは思うけど、決してしないようにしよう、と思いました。そんなことで痛くない腹を探られるのはしんどいわ(苦笑;)。