読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

いとみち 越谷オサム著 新潮社 2011年

 青森市でたった一軒のメイド珈琲店で働く、あまりにも内気で上がり症の、ちっこい少女の悲喜こもごも。

 相馬いとは高校一年生。人見知りで引っ込み思案な性格に祖母譲りの津軽訛りが輪を掛けて、中学時代は友達もあまりできなかった。こんなことではいけないと、選んだバイトがメイド珈琲店。でも「お帰りなさい、ご主人様」の決まり文句も満足に言えない。
 慣れない革靴に転び、緊張してオム絵も描けない有り様。メイクと声音で年を誤魔化し、てきぱき厳しい葛西幸子にも、必要以上に人懐っこく自分中心主義の福士智美にも怯える毎日。しかしマスターの職歴や幸子のシングルマザーという境遇、智美の漫画家になる夢を聞いたり、常連客の普段の生活を垣間見たりするうち、いとの意識は徐々に変化していく。
 まだうまく行かないながらも職場に慣れ始めた矢先、オーナーが法を犯し、捕まってしまった。店存続の危機に、マスターや常連客ともども、いとは奮い立つ。コンプレックスでもあった祖母直伝の津軽三味線を手に、珈琲店の舞台に立つ決意をする。…

 新潮ケータイ文庫連載作品だそうで。
 この作家さんは洋楽が好きなんだな~。津軽三味線ヴァン・ヘイレンを弾くハツヱおばあちゃん(訛りがきつすぎて身内以外は何を言ってるのかも分からない)、という図が描かれた時には「お、これはマイベスト『階段途中のビッグノイズ』を越えるかな」とちょっとわくわくしたのですが、全部読んでみると、やっぱり『階段途中~』の方が上だったなぁ、と思ってしまいました。
 どこぞのアイドル主演の青春映画みたいな作風は相変わらず。ラスト、いとが陥るアクシデントもその解決法も、全て察しがついてしまうのに、とにかく爽やか。言ってしまえばご都合主義な展開なのですが、「まぁ、いいよね」と許せてしまう。面白いのは面白かったんですが、なのに「もう一声!」と思ってしまったのは何なんだろうなぁ。こちらの作者への期待値が上がってしまったのか、もうちょっとオリジナリティと言うか突き抜けようが欲しかったと言うか。
 そうそう、表紙イラストでも主人公らしき女の子が着ているメイド服は、あれは「ワンピース」なんですか? ジャンパースカートではなくて?? 何しろ初っ端の記述で「ワンピース」とあって、「そうか、ワンピースのメイド服か」と思ってたらブラウスとか言葉も出て来て、何だか混乱してしまいました。私はファッションに疎いから、よく分からないんですけど;