読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

神去なあなあ日常 三浦しをん著 徳間書店 2009年

 横浜生まれの青年が林業に就いた一年間を描く。

 高校の卒業式を迎えた俺・平野勇気は、担任の熊やんと母親に、三重県の山林への就職を決められてしまった。
 携帯は圏外、雑貨屋が百貨店扱いされるようなド田舎。雪起こし、地ごしらえ、苗木の植え付け、下刈り、枝打ち。体力勝負のみならず恐怖心とも闘う仕事に、逃げ出そうにも駅までがあまりにも遠い。春はスギ花粉、夏はダニやヒルに悩まされる。村人はみんなのんびりといい加減、「なあなあ」で過ぎる毎日に、勇気もやがて流されて行く。新鮮なトウモロコシやスイカ、飛び交う蛍に川遊び、天然の川ウナギ。村では神事が生きており、山持ちの清一さんの息子・山太は神隠しに会うし村祭りも何だかひっきりなしにある雰囲気、しかも派手でも華やかでもなく、厳粛で地味で訳が分からない。どこか余所者だった勇気は山火事で活躍したこともあって、祭り本番に参加できることになった。真夜中、男衆は白装束で神去山へ登って行く。…

 何か坦々と進む記述に、へぇ、と思いました。きつい仕事の筈なのに、それがあっさり描かれて行く。反対に、いいことも大袈裟に表現されることはなく、あくまでフィフティフィフティ。これは主人公の造形にも関係あるのかしら。もっとエネルギッシュな少年だったら、脱走劇ももっと迫力あるものだったでしょうに、情にも流されてまさしくなあなあで日常が過ぎて、何時の間にやら馴染んでしまいましたね。無気力な青少年を同じような境遇に放り込んだら、案外みんなこんな風に林業をこなして行くのかも、とちょっと思ってしまいました。いや、錯覚錯覚(笑)。
 でもやっぱり、主人公が仕事を覚える様が妙に早い気がしましたけど。三浦さんの小説では、以前も同じ感想を持ったことがあったっけ。
 あの神事はどこまで本当のことなのやら、御柱祭りとかあることを考えると、似たようなお祭りは残ってるんでしょうね。危ないなぁ、とか思っちゃいけないんでしょうけど、思っちゃうなぁ。