読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

宮部みゆきの怖い話 宮部みゆき著 講談社ペーパーバックスK 2010年

 宮部みゆきの時代小説、再録短編集。

 布団部屋
 酒屋の兼子屋に奉公していた女中が死んだ。突然おびただしい鼻血を出して頓死した。女中の名はおさと、死ぬ間際まで、「鬼さんこちら 手の鳴るほうへ」と囁いていたと言う。入れ替わるように、おさとの妹・おゆうが兼子屋に奉公に上がった。ここの奉公人は、入ってすぐ、必ず奥の布団部屋で一夜を過ごすよう命じられる。おさとの四十九日が済んだ夜、はたして、おゆうは女中頭のお光に、布団部屋で寝るよう言われた。その部屋で、おゆうはおさとの夢を見る。

 梅の雨降る
 箕吉の姉・おえんが死んだ。おえんはかつて、しっかり者で骨惜しみなくよく働く気立てのいい娘だった。だが、器量が理由で料理屋への奉公を断られ、代わりに評判の小町娘が決まって以来、おえんの様子は変わって行く。特にその小町娘が疱瘡で死んでから、おえんは手拭いをかぶったまま、家から出なくなってしまった。

 安達家の鬼
 笹屋は筆と墨を商う小さなお店で、「わたし」はそこに嫁いできた。元々他の店で子守と病人の面倒を見ていた経歴を買われての縁談だった。夫は優しく、義母も決して気難しくはなかったが、以前義母の世話をしていた女中は「義母は変な臭いがする」と言う。義母は自分には鬼が憑いている、若い頃旅先で病気になった奉公先の主人を看取った家にいた鬼をそのまま連れて来たと笑う。義母には気弱そうな若い男に見えた鬼は、見る人の心根によってどのようにも見えるのだとか。鬼の気配すら感じられない「わたし」に、鬼はいつ、どのように見えるのか。

 女の首
 太郎は口をきかない。喉が悪い訳ではなく、心の奥底で何かが声を出しては危険だと知らせているようだ。死んだおっかさんは、太郎はカボチャが守ってくれていると妙に信じ込んで、カボチャ色の服を太郎に着けさせ、自身もカボチャを決して食べようとしなかった。
 やがて太郎は乞われて袋物屋に奉公に上がり、その家の納戸の唐紙に女の生首が浮かび上がるのを見る。だが、他の人にはその生首は見えないらしい。…

 角川文庫「あやし」からの再録だそうで。
 …おかしいな、だとすると読んでる筈なのに全然思い出せない;(←おいおい)
 面白かったです。読み易くて哀しくて。そうか、宮部さんの怖い話は自分を映しだす鏡なんだな。疚しい所がなければちゃんと救いがあるんだな。最後に『女の首』を持って来る所は編集さんの腕の見せ所でしょうか、後味いい構成で何だか気持ちがいい。
 宮部さんは本当、ハズレがないなぁ。…SFやファンタジーはちょっと「?」だけど(←暴言)。