読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

オレンジ・アンド・タール 藤沢周著 朝日新聞社 2000年

 自閉、妄想、刺傷。友人の自殺をきっかけに、高校生たちのリアリティが歪みはじめる。追いつめられた彼らは、限られた生の現実に何を見たのか――。
 朝日新聞に掲載された連載小説の単行本化。                        …だそうで。
 
 友人・キョウが死んだ。「オレ」カズキたちの目の前で、ふざけたようにフェンスから落ちて行った。以来、オレの視界にはノイズが走り、モリヤはグミを噛み続けて吐き気に襲われ、コミはナイフを持ち歩いている。オレは授業にもあまり出ず、江ノ島の弁天橋下でダンボール生活をしている伝説のスケートボーダー・トモロウさんの元に通う日々。心酔するトモロウさんとコミを引き会わせたが、トモロウさんの言動に、コミはナイフを閃かせる。…
 
 同じ場面をトモロウ側から描いた『シルバー・ビーンズ』も併録。
 
 お笑いコンビ・オードリーの若林正恭さんが紹介していたので手にとった一冊。
 連想したのは吉田秋生。…これは舞台が江ノ島だから、ってのも多分にありそうだな。
 当時「切れる」青少年が大流行(?)していた頃の作品なんだそうで、でもそれはまるで意識しなかったなぁ。ある程度普遍的な、この年代特有のひりつくような焦燥感ってのを、男の子はこう言う風に感じてるものなのか、と読みました。桜庭一樹さんのライトノベル作品『推定少女』とか『少女には向かない職業』とか、女の子側のざらつきを書いていた作品も思い出したり。
 ところが『シルバー・ビーンズ』になると何だか印象が変わってくる。『オレンジ・アンド・タール』だけだったらある程度大人(と言うかおっさん)に見えたトモロウが、いきなり23歳だと判ります。…え、トモロウそんなに若かったの!? しかも県議会議員の父親に反抗しての家出って、それは高校までに済ませとこうよ、大学入れて貰ったんならおとなしく卒業するか自力で稼いで生活するかはっきりしなよ、とかなり情けなく見えてくる。コミへの暴言も八つ当たりだったし。父親の秘書・田村の「探せないくらいの所へいってくれよ」ってのは、私も思っちゃいましたねぇ(苦笑;)。
 …しかし「本を三冊紹介して下さい」って言われてこのチョイス、ってのは凄いなぁ、『日経ウーマン』(だったと思う)誌でこれ選ぶかぁ(笑)。例えば爆笑問題太田光さんは、結構エンタテインメント作品を紹介するんですよね。面白さを伝える技術や努力を重視する感じで。若林さんの心に本当に響いた一冊なんでしょうけど、何だか一周以上ひねくれての直球な気がしました(←勝手なこと言ってるよ・笑)。