読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

獣の奏者 Ⅰ闘蛇編  上橋菜穂子著  講談社  2006年

 戦闘に使う獣「闘蛇」を育てる「闘蛇衆」の集落で、10歳のエリンは母親と暮らしていた。母・ソヨンは霧の民(アーリョ)と呼ばれる一族の出身。そのため、獣ノ医術師として高い技術を持ちながらも村の人々からは一線を引いて扱われていた。闘蛇衆の頭領である祖父の態度も、他の人々と変わらなかった。
 ソヨンを尊敬し、母のようになりたいと願うエリン。だがある日、闘蛇が一度に何頭も死ぬと言うと言う事件が起きる。ソヨンは何かを悟ったかのように、父親との出会いや自分の育った一族の話をする。翌日、村にやって来た大公(アルハン)の監察官から闘蛇を死なせてしまった責任が問われ、三日間の取り調べの後、ソヨンの処刑が決まる。
 ソヨンは野生の闘蛇の棲む沼に突き落された。エリンはソヨンを助けようと、母に向かって泳ぐ。ソヨンは霧の民の一族にのみ伝わる指笛で闘蛇を操り、エリンをその背に乗せるが、自分は闘蛇に喰われる最期を選ぶ。
 闘蛇によってはるか遠くまで運ばれたエリンは、蜂飼いのジョウンに助けられる。一緒に暮らすうち、蜂の生態に惹き込まれるエリン。並外れた音感に恵まれている上、自然現象に疑問を持ちながらも静かに観察し、自分なりの結論を出すエリンの聡さを見て、世捨て人のような生活をしていたジョウンも、エリンを育てる喜びを感じる。
 ある日、薬草を採りに入った山中で、ジョウンは遭難してしまう。こっそり後をつけていたエリンと共に闘蛇に襲われそうになった時、王獣が現れ、闘蛇を狩って二人は助かる。
 「王獣」――神々が真王(ヨジュ)に王権を授ける印として、天界から遣わしたという聖なる獣。闘蛇の唯一の天敵。一目で王獣に魅せられたエリンは、日毎王獣の巣に通い、子育ての様子を観察する。
ジョウンとの穏やかな生活は、4年後、ジョウンの息子が現れたことによって一変した。息子は、高等学舎の教導師長であったジョウンの名誉が回復され、再び学舎に呼び戻されたと告げる。エリンを放っては行けないと悩むジョウンに、エリンは自分は王獣を診る医術師になりたい、と言う。エリンはジョウンの紹介で、獣ノ医術師のための学校・カザルム学舎に入学する。
 初めての集団生活に戸惑うエリン。そんな彼女を、教導師長のエサルや同級生のユーアンは暖かく迎える。カザルムで保護されている王獣は、どれも野生の王獣に比べてみすぼらしかった。それでも王獣の傍にいられて嬉しいエリンの前に、怪我をした幼獣・リランが現れる。
 一か月前行われた真王のお誕生祝いの宴席で、真王は暗殺されかけた。暗殺者の矢はリランの肩を切り裂いて狙いが逸れ、真王の親衛隊<堅き盾(セ・ザン)>のイアルに当たったと言う。それ以来、餌も食べず、まるで快復しない幼獣に、学舎の医術師達は手を焼いていた。
 エサルは、野生の王獣を見たことがあるエリンにリランの世話を任せる。エリンは王獣の親子を思い出しながら、リランの獣舎に寝泊まりを始める。…

 NHKでアニメも始まった作品。後藤隆幸さんにしてはえらくすっきり、簡単な絵だなぁと思いつつ見ていたら(←この辺りがオタクたる所・苦笑;)これがどっこい、昔懐かし「カルピス世界名作劇場」みたいな感じで結構面白くて、原作も読んでみる気になりました。
 いいなぁ、これ。今まで読んだ上橋さんの作品の中で一番好きかも。
 ソヨンのエリンに対する態度がいい。まだ幼い娘に、まだ理解できないだろうけれど伝えなければいけないことを、誰にも話すなとは言わない。「何故話しちゃいけないのか分かるまで話してはだめ」…この言い方は賢いなぁ。
 アニメを先に見てしまったのが少し残念な所もありました。もし見てなかったら、私は<闘蛇>をどう言う風に想像したんだろう。エリンの村は、王獣は。
 でも原作を読んだことで、アニメのよさも改めて感じました。原作ではソヨン、すぐ死んじゃうんですね。アニメでは闘蛇衆の村の日常をこまごまと描いてるのは、これは上橋さんの協力が大きいだろうなぁ。エリンのお母さんへの思いや賢さの描写も丁寧。でもどこまで原作に忠実にやるんだろう、これ結構ハードな話になりそうなんですが;
 闘蛇にしろ王獣にしろ、音無し笛と呼ばれる笛で縛られる存在。エリンは本当にそれでいいのか、野にあるように獣を育てたいと思い、その甘さをどの大人からも指摘されています。特滋水の副作用については何となく察しがついてるのですが、それがどう関係してくるのか。
 2巻が楽しみです。