読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

獣の奏者 Ⅱ王獣編  上橋菜穂子著  講談社  2006年

 傷ついた王獣の子・リランを救いたい一心で、エリンは王獣の母親が発する声を真似ることを思いつき、竪琴を改造してリランと心を通わせることに成功する。だが、それは初代真王が記した王獣規範に反することだった。
 王獣とは、闘蛇を操り血と穢れを背負いながらも他国と戦う大公が、唯一敵わない存在の象徴。大公の、真王に誓う忠誠が揺らいできた今、人間に懐かないと思われていた王獣を操れる人物が存在することは、この国の権力構造を覆すにも値することだった。
 エリンはリランを、音無し笛で拘束することも薬草を混ぜた特滋水を飲ませることもなく、竪琴で育てて行く。やがて成獣になったリランは空を飛べるようになり、偶然からエリンもその背に乗って一緒に飛ぶようになる。捕獲された野生の雄王獣と交合し、子を産む。エリンは霧の民と出会い、王獣と心を通わせてはならない本当の理由を聞く。
 だが王獣の妊娠は、何も知らない真王には喜びだった。リランの子を見るためカザルム保護場へ行幸した真王は、その帰り、闘蛇軍の襲撃を受ける。
 エリンは思わず飛び出し、リランに乗って闘蛇を蹴散らす。その様子を知った真王は、エリンを王都に招き、自分を警護させようとする。エリンは霧の民から聞いた過去の過ちを話して警護を辞退し、真王もそれを理解するが、それも束の間。真王は襲撃の怪我の後遺症で死んでしまう。
 後を継いだ次期真王・前王の孫娘セィミヤは、再びエリンを呼び出す。セィミヤにも真実を話したいが、前真王の甥・ダミヤが邪魔をしてセィミヤに会えない。大公の長男・シュナンはこの国の行く末を憂い、セィミヤに、自分と結婚して権力と武力の一本化を図るよう申し入れる。真王の神格を損なうこの行為を、ダミヤは許す訳に行かない。エリンにシュナンの乗る闘蛇を襲うよう指示、またシュナンの弟・ヌガンの真王への頑なな忠誠心を利用し、ヌガンにもシュナンを殺させようとする。エリンの乗ったリランは本能のまま闘蛇を引き裂く。エリンはシュナンを救い、リランの背に乗せる。リランが飛び去った後、闘蛇の軍の中に、エリンは一人残る。…

 Ⅰからすぐに回って来ました、Ⅱ巻です。一気に読めてよかった~♪
 Ⅰでもぼちぼち触れられていた国の歪みが露わになり、エリンも権力闘争に巻き込まれて行きます。話的にもどんどん盛り上がって行ってわくわくはらはらしました。
 エリンの努力は出自もあってなかなかまともに認められない。そんな中、エサル師の冷静な目がエリンを見守っているのが嬉しい。何しろかっこいい女性が多いですね~。リランも雌だし(笑)。
 でも、エリンは逃げようと思えば逃げられる訳ですが、二人の真王は受け止めて立ち向かうしかない。誰もが賢明で、無知なままで良しとしない。ただ何も考えず受け入れるのではなく、全てを知って自分で判断しようとする。
 混戦の中、Ⅱ巻は終わります。王獣との交感は復活したのか、ダミヤはこのまま引き下がるのか、イアルは、シュナンは。Ⅲ巻が3月に出るんですよね、楽しみです。