なによりも大切にせねばならぬ人の命。その命を守る治療ができぬよう、政治という手が私を縛るのであれば
折も折、安房那領で行われた〈鳴き合わせ、詩合わせ〉の会で、食中毒騒ぎが起きる。おそらくその毒は盛られたもの、治療法は馬の血から作られた血清の注射。清心教徒には受け入れられる治療ではない。だが、ホッサルとミラルはそれを使う決意をする。果たして、後日、その罪を問う審議会が開かれた。
審議の中、ホッサルはこの事件の真意に気付く。毒を盛ったのは誰か、その目的は。…
(出版社紹介文に付け足しました)
『鹿の王』後日談というかスピンオフというか。 奥付を見たら、発売2か月で4刷かかってました。…さすが!(笑)
ホッサルだのミラルだの政治関係だのの設定はすっかり忘れていてですね、ほぼほぼ新鮮に読みました(←こらこら;)。なかなか状況が掴み辛くてですね、それでもうんこらと読み進めて、でもこれは仕方ないな、物語が大きく動く終盤への前振りみたいなものでしたから。それだけに裁判からの流れは一気で、手に汗握りました。
中盤でホッサルの言う、医術の限界と諦め、心の平穏へと逃げる心理状態、テーマはこれに尽きるかと。ただ、「神の領域」にまで踏み込もうとしている現代医療は、どこまで認められるものなんだろう、ということにもなってくるんですが。
ミラルが案外強かで微笑ましかったですね。ホッサル、尻に敷かれそうだ(笑)。