読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

獣の奏者 Ⅲ探求編  上橋菜穂子著  講談社  2009年

 『獣の奏者』続編。
 ネタばれになってるかな、すみません;

 前作から11年。
 ある闘蛇村で<牙>の大量死が起きた。<牙>とは闘蛇の中でも先陣を担う強大な種。その死因を探るため、エリンが派遣される。禁忌とされてきた腑分けを行い、<牙>が全て雌であること、原因が無性卵が卵管に詰まってそこからの壊死であることを突き止める。
 闘蛇を強くするための特慈水が本来の闘蛇の姿をどう歪めるのか、分かっていながら与え続けた母を思うエリン。その闘蛇村に嫁いでいたエリンの父の親族に偶然出会い、エリンは母の遺稿を手に入れる。そこには<残った人々の谷間(カレンタ・ロウ・パレ)>という言葉が記されていた。
 エリンの護衛を勤めるヨハルはその後、最初の闘蛇村・ウハルへエリンを案内する。ヨハルの故郷でもあるその村では、<牙>の大量死は起こったことがない。時々緑の目の子供が生まれ、かつて真王から闘蛇を操る許しを与えられたと言う伝説の残るこの村で、エリンは自分の知る歴史との捩れを感じる。
 <牙>として雌が選ばれない理由を知ろうと、野生の闘蛇の卵採りについていったエリンとヨハルは、何者かに襲われる。追い詰められてエリンは母の指笛を真似、野生の闘蛇を操ってその背に乗り、ヨハルの館へ辿り着く。ヨハルは大公領発祥の地・アスマル領の領主だった。アスマル家には代々伝わる日誌があり、エリンは暗号のようなその文字の読み方を母から教わっていた。
 やはり、初代真王は敵対していた筈の緑ノ目ノ民(トガ・ミ・リョ)に力添えを頼むほどの絆を結んでいたらしい。全ての疑問に答えを知りたい、と<残った人々の谷>を訪れることと願うエリン。しかしヨハルに、エリンは唯一の王獣使いとして<血と穢れ(サイ・ガムル)>に命を狙われている、と改めて語られる。その上、リョザ神王国と敵対するラーザ国に闘蛇の飼育方法が流れたらしいと言う情報も入り、闘蛇の唯一の天敵である王獣を操るエリンは、リョザにもラーザにも重要人物となっていた。王宮に軟禁されることになるエリン。その頃エリンの夫・イアルも息子・ジェシも、価値ある人質として双方から狙われていた。
 エリンは真王セィミヤに自分の想いを打ち明け、その協力を得て王宮を抜け出す。<残った人々の谷間>目指してリョザ神王国を抜け出そうと、荒れ狂う河を渡るが溺れ、襲撃者から逃れて来たイアルとジェシに救われる。
 国中に敷かれた包囲網に、<残った人々の谷間(カレンタ・ロウ・パレ)>探求を諦めるエリンとイアル。死んでも母が守ろうとした規範を破り、王獣の繁殖と操縦方法を見つけて、過去の惨劇の真相を探ろうと決意する。…

 大したもんで、読んでる間中スキマスイッチの「雫」♪せ~な~かにあったつ~ば~さは~♪がエンドレスで流れてました。アニメ『獣の奏者 エリン』の主題歌ですね、せりあがって行く6拍子がお気に入りなんですよ。
 前作から11年、エリンはイアルと結婚して一児を設けています。旦那さんが誰なのかなかなか明かされなくて、イアルだろうと思ってはいたけど、あまりにも当たり前にイアルが出て来た時には「…あれだけ勿体ぶっといて…」とか思ってしまいましたよ。二人とも底辺に絶えず流れる不安に怯えつつも平穏な日々を送っていましたが、その日常が壊れる所から3巻は始まります。
 エリンもイアルも不幸な生い立ちを背負っていた分しっかりしていたんですが、まぁジェシの幼いこと! ちょっと歯がゆいほどですね。両親からしっかり愛情を受け取って育ったら、あんなふうになるのかな(笑)。
 <残った人々の谷間(カレンタ・ロウ・パレ)>へ行くのかと思ったらどうもそうは行かないようですね。イアルも闘蛇乗りに志願、いよいよ大きな国の流れに呑みこまれて行きます。
 何だかハッピーエンドにはなりにくそうな感じ、不安なまま次巻に続きます。