読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

烏の緑羽 阿部智里著 文藝春秋 2022年

 『八咫烏』シリーズ。
 ネタばれあります、すみません;

 長束は、側近の路近の思考が分からない。時折見せる暴力性など不気味に思うが、その感情は奈月彦にも理解して貰えない。愚痴じみたものを零していると、奈月彦から清賢を紹介された。清賢は路近の師匠に当たる人物で、飄々と長束を諭した後、翠寛を配下に迎えるようアドバイスを与えた。翠寛は過去に雪哉と敵対した人物で、今は鄙へと下がっていた。
 翠寛は若い頃、勁草院で路近に仕え、身の回りの世話をしていた。路近は幼い頃から協調性がなく、目下の者等を大切にすることを理解できなかった。理不尽に暴力を振るわれる翠寛を、教師として赴任してきた清賢が救う。清賢は、歪んだ形で発露する路近の疑問に、根気よくつきあった。曰く、人が殺意を行動に移す境界を知りたい。その標的にされた翠寛は、際限のない嫌がらせの末、馴染みとなった谷間出身の遊女 鞠里を、路近に奪われる。
 鞠里は路近の実家に唆され、路近の毒殺を企てたが失敗、谷間に逃げ込んだ。鞠里を捕まえようとする路近、救おうとする翠寛が谷間に押し掛ける。路近の危機を知った清賢も。そして、路近の命と引き換えに、清賢は右腕を失った。
 清賢の言ならば、と翠寛は嫌々ながら長束に仕え、綺麗ごとでは済まない様々な諸事を講授する。自分の視野の狭さ、奥行きのなさを自覚した長束は成長し、奈月彦の有能な右腕になる、筈だった。
 奈月彦が殺され、先行きの決断を迫られる長束。その傍には、路近も、翠寛もいた。長束は翠寛に、奈月彦の遺児 紫苑を託す。…

 長束ってこんなに頼りなかったっけ?? もっと弁えた、大人な感じのデキる人、ってイメージだったんですが、それはシリーズの頭からではなく、徐々に成されたものだったのね~。
 いやもう何しろ、路近の印象が悪すぎてですね、途中、読むのを苦痛に感じたほど。彼を「温厚な方」とかいう清賢も清賢だし、目を着けられた翠寛の不幸っぷりがとにかく辛くて、何とか路近にぎゃふんと言わせたい、報いを受けさせたいと黒い気持ち満載で読み進みました(苦笑;)。なのに、いざその段階になったら、みんな寄ってたかって路近助けるんだもの。その後路近が成長したとも思えないしさぁ。
 とりあえず、お話は繋がりました。翠寛が育てたなら、紫苑はきっと賢く逞しく育ったことでしょう。清濁併せ吞んだ上で、紫苑は理想を語るのか。楽しみです。