読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

追憶の烏 阿部智里著 文藝春秋 2021年

 『八咫烏』シリーズ。
 ネタばれあります、すみません;

 雪哉が外界へ留学している最中に奈月彦が刺殺された。何者かに呼び出され、二人の側近もろとも殺された。幼い姫宮に次の金烏を継がせようと計画中だったが、四家の反発を受けてまだ志半ばだった。
 黒幕は紫雲の院として、実行犯は誰なのか。日頃慎重な行動をとっていた奈月彦が、何故うかうかと誘いに乗ったのか。その日から姿を眩ませた、下働きの女三人が怪しいと、捜査にかかる雪哉。犯人には、護衛の明留が、死してなお放さなかった噛み痕がついている筈だった。そしてそれは、奈月彦の妹 藤波の羽母の腕にあった。
 事件が解明され、長束を後見に姫宮を立子するつもりだった雪哉たち。だが凪彦なる幼児が現れ、親王として宣下される。凪彦は前金烏 捺美彦とあせびの御方の間にできた子で、長束も雪哉も、その存在すら知らなかった。奈月彦の統治方法に不満を募らせていた南家と東家は、秘かに奈月彦の一派の失脚を謀っていた。
 徹底抗戦を主張する浜木綿の御方。雪哉は、もう受け入れるしかない、山内で争っている局面ではない、と説得にかかる。だがそれは血気に逸る浜木綿には受け入れられず、奈月彦の遺言書にも否定された。そして雪哉は東家側に寝返る。浜木綿と姫宮に追手を掛けるが、天狗の助力を得て二人は行方をくらます。
 そして十余年。官吏試験に、西家の真赭の薄の娘だと言う少女が現れる。奈月彦とそっくりの容貌を持つ彼女は、澄生と名乗った。…

 …こう来るか…!
 奈月彦が殺されるとは思いもしませんでしたし(あの死にざまはアニメ『ハウルの動く城』のハウルだよなぁ)、今更あせびの方が出て来て「えええええーーーー!!!??」。藤波なんて「誰だっけ?」、すっかり記憶の外でしたよ(←おい;)。
 雪哉が切ない。独りになっちゃったよ、同窓ほぼほぼ死んじゃったよ; 誰より冷静で理が勝つ性分が仇になった感じ、山内全体のことを考えてたのは雪哉だったのに。理解者だった筈の奈月彦にも、裏切られたような形になっちゃったもんなぁ。奈月彦は雪哉が留学から帰ってきたら、何を相談しようと思ってたんだろう。
 「真の金烏」の価値が形骸化してた、ってことなのかしら、四家のあの反応は。でも相手側の言い分聞いてると、そりゃちゃんと説明されなければ、ああいう風に考えるかもとも思えてくる。コミュニケーションって大事だよなぁ(しみじみ)。
 成長した姫宮(おそらく)が現れて、今後どうなることやら。何だか『彩雲国物語』にもなりそうな気がしますが。
 えらい展開になりました。