読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ヒストリア 池上永一著 KADOKAWA 2017年

 ネタばれあります、すみません;

 第二次世界大戦の米軍の沖縄上陸作戦で家族すべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉。焼け跡から拾い上げた母の形見 房指輪をお守りに、戦後の沖縄を生き抜く決意をする。パラシュートの布地で仕立てた洋服を売り、ジョニ黒を貨幣代わりに、一時の成功を収めてみせる。だが仕事のパートナーに選んだ男が共産主義にかぶれ、そのとばっちりを受けて煉も米軍のお尋ね者に。丁度その頃知り合った日系ペルー人の高良峰子の協力も得て、煉は、やはり沖縄に絶望したインテリ男 伊計陽介と、ボリビアへの移民船に乗る。まるで何かに呼ばれるように。
 移民船の中で散々浪費し、煉を甘やかした伊計。だがその実、伊計は先のことなど考えない男で、ボリビアには無一文で着くことになった。ここでもがむしゃらに働く煉。沖縄系ボリビア人のイノウエ兄弟と出会い、チョリータ・プロレスの女王カルメンとも友情を結ぶ。
 カルメンの引き合いもあって漸く成功したアパレルブランド、だが不安定な政情下での投資が祟って、煉はまたしても負債を背負う羽目に。煉はサンタクルスに沖縄の植民地ができる、と聞いて、農業で一旗揚げることを決意する。
 だが、そこも楽園ではなかった。移民たちに与えられた土地は未開拓な上、度重なる水害と移動、謎の伝染病『うるま病』にまで苦しめられた。煉自身うるま病で生死の境を彷徨い、結果マブイが入れ替わる。沖縄爆撃の中、ボリビアにまで飛ばされていたもう一つのマブイ、実はこちらが本来の煉だったのだ。堅実に農作業に精を出す煉。だが、ナチスの残党に騙され、コカインの違法栽培と密輸に、知らぬ間に関わってしまうことに。それを切っ掛けに、煉はイノウエ兄弟と共に、キューバとの密輸入貿易に手を染める。キューバでは、実体のない煉のマブイが、チェ・ゲバラと恋に落ちていた。
 実体のないマブイの煉は伊計と再会、彼が沖縄のアメリカ軍から核弾頭を盗み出したことを知る。彼女は実体の煉に成り済まし、核をキューバに持ち込もうとする。それを阻止し、アメリカとの戦争を回避させたのも煉だった。
 煉はコロニア・オキナワに戻り、再び農作業に勤しむ。イノウエ兄弟の弟と結婚し、娘を授かる。貧しいながらも穏やかで幸せな日々は、またしてもナチスの残党に壊された。娘が誘拐されたのだ。交換条件はチェ・ゲバラの消息。状況を知ったもう一人の煉は、娘を救うためにゲバラの情報を差し出す。愛するボリビアを、革命の渦に巻き込もうとするゲバラを止めるためにも。そしてゲバラを喪った彼女は、暗闇の中に閉じ込められてしまう。
 ボリビアでの「何もしない」農業に、夫の死を切っ掛けに気付いた煉は、大富豪になった。丁度飛び込んできた沖縄本土復帰のニュースに、煉は居ても立ってもいられず、娘を連れて沖縄へ向かう。自分のマブイが沖縄に戻っていること、それを拾って一つになることを目的に。…
                                   (帯文に付け足しました)


 何の予備知識もなく、「あ、池上さんの新刊出たんだ」ってんで借りた一冊。そしたら表紙がチェ・ゲバラでびっくりしました。あれ、池上さんこういうの書くの? 佐藤賢一さんならわかるんだけど。…とか思いながらページを捲ると、沖縄戦から物語は始まりました。…成程、まさしく池上さんだわ。
 沖縄戦の様子を、こういう文章で読むのは、多分私初めてだと思います。沖縄の子供たちは、オバァからこの記憶を語られているんだろうか。こんなにも惨い記憶を。煉は最後まで逃れられない訳です、何とも辛いことに。
 相変わらず、物凄いジェットコースターっぷり。登場人物みんなパワフルでどこかお馬鹿、荒唐無稽。でもこの造形で、背景無惨なんだよなぁ。これ、池上さん取材したんだろうなぁ。
 あちこちに飛ぶ描写は、やっぱり戸惑うこともありました。何か前と矛盾してないかい、と思うこともあったり(苦笑;)。でもここは勢いで乗り切るべきでしょう。
 南米の価値観やチェ・ゲバラの取りつかれたもの等、まるで知らないことばかりでした。
 『テンペスト』の時も思ったのですが、主人公の年齢が今一つはっきりしなかったなぁ。とりあえず、レースのブラジャーに憧れるような年頃の女の子ではあるんでしょうけど。
 それにしても、この表紙は違うんじゃないかなぁ; こういう内容の物語ではないと思うんだけど;;