読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

日本文学全集 09 平家物語 古川日出夫訳 河出書房 2016年

 ページをめくる手も、涙も、止まらない。

 混迷極まる政治。相次ぐ災害。そして戦争へ……
 国が変わる、歴史が変わる。
 日本が歴史的転換を果たした動乱の10年間を描いた、文学史上空前のエンターテインメント巨編を、
 語りの魔術師・古川日出男の完全訳で。

「古代日本で最も武張った年代記。栄華から滅びにいたる道筋の哀感を、語り物につながる文体で伝える」――池澤夏樹

「『平家』は一人の作者の手で書かれたのではない。一人の琵琶法師の声で語られたのではない。
多数の多声。そんなポリフォニックな中世のメガノベルをいかに訳すか? さいわい僕は答えを持っている。さあ、現代の『平家』だ」――古川日出男

 帯装画:松本大洋
 月報:高畑勲/安田登
 解題:佐伯真一
 解説:池澤夏樹

 平安末期、貴族社会から武家社会へと向かうきっかけとなった、いわゆる源平合戦と呼ばれる動乱が勃発。武士として初の太政大臣となった平清盛を中心に、平氏一門は栄華を極めるが、悪行を重ね、後白河法皇の謀計を背景に、頼朝や義仲、義経ら源氏によって都を追われる。十七歳の若武者・敦盛の最期、弓の名手・那須与一の活躍、屋島・壇の浦の合戦、そして幼帝・安徳天皇を伴った一門の入水……琵琶法師により語り継がれ、無常観を基調に描かれた軍記物として、後世日本の文学や演劇などに多大な影響を与えた大古典。圧倒的語り口による、類を見ない完全訳。

【翻訳の特徴】
1 原文に忠実でありながらも、すらすら一気に読み通すことができる、流麗かつわかりやすい現代語訳。
2 スピード感溢れる原文の魅力を十二分に味わえる、軽妙かつリズミカルな文体。
3 貴族社会から武家社会へ向かう日本史の変遷そのものを、訳文の中に批評的に溶け込ませた、作家訳ならではの大胆な試み。                                 (紹介文より)


 この辺りのことをとにかく知らないよなぁ、と思って借りた『犬王』に、この作品が紹介されていまして。古川さんの語り口で平家物語とは面白く読めそうだ、と借りてみました。
 …時間かかったぁ。貸出延長を繰り返し、間に優先させなきゃいけない予約本が来たこともあって、結局10週間。中断に継ぐ中断を重ねながらも漸く読み終えました。
 読んだ端から忘れたことも多々なんですが(…;)、へぇ、と思うことも。平清盛にもちゃんと父親を諫めるような優秀な息子がいたんだなぁとか(でも父親より早く死ぬ)、木曾義仲ってこんなのだったのかとか、巴御前ってあんまり記述なかったなぁとか。源義経も部下に恨まれても仕方なかった面もあったようですし。
 中学の国語の教科書に載っていた那須与一の場面や安徳天皇の最期、平知盛の女御との会話がこんな風に訳されたのか、とも思いました。
 「平家の落人が」とか「怨霊が」とか聞くことがありますが、確かにこれは恨まれても仕方なかったかも。とにかく平家の残党狩りが容赦ない。ここまでしなきゃいけなかったのかなぁ、頼朝肝っ玉が小さいような気が…。いや、自分自身が生き延びて平家への復讐を果たした、という実例だからなぁ。
 関西地方に住んでいる身としては、馴染みのある地名がわさわさ出て来るのもこっそり嬉しかったです。
 いや、本当にこの時代のことを詳しく知りたかったら、ゲーム『遥かなる時代の中で』の一作をやり込んだ方が手っ取り早い気はするんですがね;
 とりあえず、達成感です。解説まで含めて905頁、よく読んだよ私…! でもすぐ忘れるんだろうなぁ;;