読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

平家物語 犬王の巻 古川日出男著 河出書房新社 2017年

 壇ノ浦に子供がいた。二つに分かれた思惑で、壇ノ浦に沈んだ神器を欲した朝廷は、壇ノ浦の漁師に引き上げを頼む。子供の父親が依頼を受け、だがその剣を抜いた瞬間、漁師はその閃光に命を失い、共にいた子供は盲いた。
 長じて子供は京に上がる。自分が失明した理由を知りたいと旅に出て、途中琵琶法師に出会い弟子入りする。背後には父の亡霊を、ひいては死者からの声を聞く能力を持って。名を五百友魚(イオノトモナ)と言う。
 京の都で子供が生まれた。猿楽の家に生まれた彼は、父親の呪によって、肉塊として生を受けた。その醜悪さから母親からも放っておかれた子供は、それでも自力で生き延びる。兄たちの舞う能を見て足さばきを覚えた子供は、自分に変容が起きたことを知る。彼には美しい膝から下ができていた。名を犬王と言う。
 新しい所作を覚えるにつれて、犬王の身体は肉塊から人の身体に変化する。それも美しい人の身体に。犬王の身体に憑いていたのは平家の群霊、父親が自らの芸を窮めるために息子の身を差し出したから。犬王と友魚は邂逅し、友魚は犬王に憑いた群霊の声を聴く。そして次々に新しい「平家物語」を謡い、犬王は舞う。度に群霊は浄化され、ますます犬王はひとの姿に戻る。やがて犬王が完全なる美しい姿を取り戻りた頃、足利幕府によって、平家物語を語ることが封じられた。…


 どうも室町とか平安とかの歴史辺りがよくわかんないな、誰か解りやすい小説書いてくれないかな(←自分で調べろよ)と思ってた所で目についた一冊。で、借りてみました。
 思っていたような内容ではなかったのですが、でも面白かった。
 古川さんの作品はそんなには読んでいないのですが、こういう大時代的な「語り」口調は、そういえば好きだったんだよなぁ。
 連想したのは手塚治虫著『どろろ』。犬王の造形というか言い伝えと言うのかが元々あったのかしら、犬王の方が先にあったのだとしたら、これ明らかに手塚治虫はここから着想を得てるよなぁ。
 結局は見捨てることになった友魚を、最後犬王は迎えに行きます。芸に生きるものとして、それぞれの決断はありだ、とお互い認め合っていたんだろうか。切ない気もするけれど。