読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

人間じゃない 綾辻行人未収録作品集 綾辻行人著 講談社 2017年

 短編集。 

 赤いマント
大学生の希早子はバイト先の塾の教え子・由紀から「赤いマント」の怪談を聞いた。その直後、希早子は公園のトイレで、「……あかーい、マントを……かぶせ、ましょうか……」の声と、真っ赤に染まった由紀に遭遇する。

 崩壊の前日
大雪の降った日。奇妙な夢を見て目覚めた「わたし」は、彼女との待ち合わせ場所に向かう。コートのポケットに突っ込んだ掌に次々と生まれて来る石ころ、彼女――由伊はそれを「わたし」の身体の一部だという。

 洗礼
U君から、27年前の原稿が送られてきた。大学のミステリ研で初めて書いた犯人当て小説、ロックバンドのヴォーカルを務める「おれ」の周りで起きた殺人事件とその謎解き。若さゆえのヌルい展開に赤面しつつ、今このタイミングでこの原稿が送られて来たことへ思いを馳せる。

 蒼白い女
地下二階の喫茶店で、異様に蒼白い顔をした女に出会った。その理由はやがて分かったが、それにしても彼女のことが気になる。

 人間じゃない ――B〇四号室の患者――
亡くなった伯父の別荘に遊びに来た四人。うちの一人、女子大生の由伊は「人間じゃないものがいる」と怯えた様子、その夜密室の中で、捩じ曲がった異様な姿で、彼女の遺体が見つかった。
発見者の一人「僕」は地下病棟に閉じ込められた状態で、当時の状況を語る。…


 『深泥丘奇談』や『眼球奇譚』が出版された後で、その関連として出されたような作品が多いようで、なるほど、どこにも収録しにくかっただろうなぁ。
 ミステリ仕立の物は、きっちり納得できる結論があってすっきりしました。『赤いマント』や『蒼白い女』の、女の顔が蒼白い理由がそうですね。みんなが正解できたという若書きの犯人当て小説は、すみません、私分かりませんでした;; でも「人間じゃない」の真相は、察しがつきましたけど。
 講談社の宇山編集者の存在(「元」講談社だったんですね、独立された矢先だったんだ)の大きさを、改めて確認する『洗礼』。作家さんにとって、作品にとって編集者がいかに大切か。ここまで慕われるということは、宇山さんも編集者冥利に尽きるでしょうね。