読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

何が困るかって 坂木司著 東京創元社 2014年

 掌編集。

いじわるゲーム
高校二年の時、友人のM子に彼氏ができた。なのに自分には何も話してくれない。不機嫌な気持ちになった「私」はM子の相手の男に囁く。「彼女はもう、処女じゃないよ」

怖い話
夜更けの酒場にて。男が話す「怖い話」は、女には思い当たることが多すぎて…。

キグルミ星人
幼い娘と二人で出かけた広場では、着ぐるみショーをやっていた。帰ってこない夫を思っていると、クグルミ星人が優しく抱きしめてくれた。

勝負
俺は毎日、じいさんと勝負している。バスでどちらがぎりぎりまで、降車ボタンことピンポンを押さずにいられるかを。

カフェの風景
カフェにて、客同士がお互いを値踏みしあう。犬や猫までも。

入眠
介護老人とその生まれ変わりの赤ん坊の独白。

ぶつり
職を失って、男はとある女のマンションに転がり込んだ。貯金をすり減らして、料理や狩りまで覚えて、女に尽くす日々。でも、日々女の要求はエスカレートしていく。ある日、女は別れを切り出した。
 
ライブ感
ツイッターSNSで、お店や集まりを検索して通う日々。それでも物足りなく感じ始めていたある日、とあるデモへの参加呼びかけに気付く。

ふうん
何でも信じてしまう女。散々騙されて、お金もなく、身体もボロボロ。愛って信じていいことあるの?

都市伝説
民俗学のフィールドワークのため、地元の幼馴染に連絡を取る。「銭ばぁ」転じて「赤パンばばぁ」、「猫じじい」に「一つ目犬」。全てに共通して「悪魔の小学生」が関わっていた。

洗面台
洗面台から見守る「ご主人様」の日常。

ちょん
オジギソウのように、部下が失態するとつついておく。しつけするためにもつついておく。

もうすぐ五時
公園にて、様々な人が5時を迎える。彼氏に振られて、最後のデートを待つ女、内定取り消しの電話を受けた学生、コンビ解消を切り出したお笑い芸人。

鍵のかからない部屋
鍵のかからない部屋で、手術を受けた「私」は療養している。お腹にできたできものを取ったのだ。「私」は早く鍵のかかる部屋に帰りたい、あの人が通ってくれる鍵のかかる部屋に。

何が困るかって
指がぽろぽろと落ちていく。昔から動じない性格で、手袋をはめて誤魔化す。来週までに帳尻をあわせればいいか。

リーフ
背中に蕁麻疹ができた。結婚式まであとわずかだというのに。原因は分かってる、何かにつけ「忙しい」と繰り返す母だ。式当日にも、私を責める。その母を、父が責めることに気が付いた。

仏さまの作り方
「ありがとう」と言われるのが好きで、ボランティアや寄付を始めた。みんな俺を持ち上げるが、俺はそんなつもりで行動はしていない。

神様の作り方
交差点のガードレールに、小さな花束を括り付けておく。ウサギのぬいぐるみや、黄色い幼稚園の帽子も置いてみる。いつの間にか、そこは「あきえちゃん」の事故現場になっていた。…


 前回読んだ肉小説から思っていたのですが、坂木さん、作風変わった? というか、広がった、と見るべきか。
 何だか全体的に気持ち悪くて後味の悪い作品が増えたような…。『ちょん』なんかは、人によって取り方違うんでしょうが、私には「人を試すイヤな奴」に見えてしまいました。会社から見たら、部下を育てるのが上手い優秀な上司、なのかもしれませんが。
 『仏さまの作り方』なんかは、悪意のない新興宗教の始まりってこんなのかもしれない、と妙に納得しました。