読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

エムブリヲ奇譚 山白朝子著 メディア・ファクトリー 2012年

 社寺参詣や湯治のため庶民は諸国を旅するようになった。旅人たちは各地の案内をする道中記を手に名所旧跡を訪ね歩く。
 『道中旅鏡』の作者・和泉蝋庵はどんな本でも紹介されていない土地を求め、風光明媚な温泉や古刹の噂を聞いては旅をしていた。しかし実際にそれらがあった試しはない。その理由は蝋庵の迷い癖にある。仲間とともに辿りつく場所は、極楽のごとき温泉地かこの世の地獄か。
 江戸――のような時代を舞台に話題の作家・山白朝子が放つ、奇妙な怪談連作。        (内容紹介より)


エムブリヲ奇譚
 「私」耳彦は旅先でエムブリヲ――胎児を拾った。博打で借金を背負うようになった耳彦は、やがて胎児を見世物にするようになる。

   一瞬「耳彦、いい人かも」と思ったのも束の間、やっぱり駄目人間のようで(苦笑;)。

 和泉蠟庵と耳彦と一緒に旅をすることになった輪。旅先の村で子供の命を救ったお礼にと、老婆から瑠璃石を貰った。その石と共に、輪は何度も生涯を繰り返すことになる。生まれる度、自分の命と引き換えに母親を喪いながら。

   「四度目、五度目、六度目の人生を勉強に費やした」の一文に脱帽。「自殺をしてはいけない」が
    こう来るとは。

湯煙事変
 その村の温泉は、夜入ると戻って来られないという。蠟庵の差し金で夜中、温泉に浸かった耳彦は、湯煙の中、今はもう死んでしまった人々に会う。


 旅の最中、懐いてついてきた鶏を引き連れて出会った村は、そこら中に人の顔が浮き出て見えるような村だった。雨に降り籠められ長逗留することになったが、魚や野菜にまで人の顔が浮き出ていて、耳彦には食べられない。

   いや、これは気味悪いよ。耳彦の方がまともな気がするけど;

あるはずのない橋
 夜になると現れる刎橋は、その昔落ちてしまったものだという。宿泊先の老婆に耳彦は、自分をそこへ連れて行ってほしいと頼まれた。何でも、幼い息子をそこで亡くしたらしい。

顔無し峠
 旅先で耳彦は、喪吉と言う男に間違われた。不器用で賭博狂いで、耳彦にそっくりな喪吉。顔無し峠で土砂崩れに巻き込まれて死んでしまったらしい。だが彼の妻も子も、耳彦を見て「喪吉が帰って来てくれた」と泣き崩れる。

地獄
 耳彦は山賊一家に捕まって、深い縦穴の中に閉じ込められてしまった。一緒に閉じ込められていた若夫婦の妻が先に穴から出され、そのために残された二人は、自分たちに与えられていた干し肉の正体に気付いてしまう。復讐を誓う夫は、次に自分が引き上げられることを願った。

櫛を拾ってはならぬ
 耳彦の代わりに蠟庵について歩くことになった若者は怪談が好きだった。初め、蠟庵とも良好な関係を築いていたのに、徐々に彼を毛嫌いするようになる。曰く、蠟庵の長い抜け毛が鬱陶しいとか。

「さあ、行こう」と少年が言った
 嫁ぎ先で、「私」は酷い虐めを受けていた。外に出られない状況の中、ある日「私」は蔵の中に迷い込んできた少年と出会う。「私」は少年から読み書きを教わった。しかい内緒の日々は、ある日家人にばれてしまう。…


 先日読んだ『私のサイクロプス』の前シリーズ。そちらでは結構メインを張っていた輪が、一話しかでて来なくてびっくりしました。随分出世したねぇ(笑)。
 面白かったです。暴力、スプラッタ、生理的嫌悪や情緒的な気味悪さ等、様々な種類の「怖さ」をとりどりに混ぜ合わせた感じ。情に訴えかけるかと思いきや、結局非情で落としてみせたり、で、やっぱりユーモラス。まとわりつく髪の毛を気味悪がるより、抜け毛を気にする蠟庵先生には突っ込みどころ満載でしたよ。
 蠟庵先生の迷い癖はどうもとんでもないレベルのようですね。でもちゃんと同じ所に出られたり、帰ろうと思ったら帰れもするみたいで、その辺の能力は後退している気がしないでもない。
 そうそう、3本の糸のみの栞紐は、一つに括られていました。…図書館の本だもんな、誰かがまとめたんだろうなぁ。少々残念でしたが、失くなってないだけよかったのかな。でも奇妙な怖さは半減でした。