読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

滅びの鐘 乾石智子著 東京創元社 2016年

 北国カーランディア。建国以来、魔法の才をもつカーランド人と、征服民アアランド人がなんとか平和に暮らしてきた。だが、現王のカーランド人虐殺により、平和は消え去った。怒りに燃える大魔法使いデリンが、平和の象徴であった鐘をで打ち砕いたのだ。そして闇の歌い手タイダーと魔物カイドロスをも解き放ってしまった。デリンは虐殺を逃れた孫息子オナガンを連れて王都ローランディンを去り、一方、四百三十九に砕け散った鐘の欠片は、さまざまな物の中に入り込み、それぞれの運命を狂わせて行く。
 一万人のカーランド人を殺したボーレン王は悶死し、第一王子イリアンは足が立たなくなった。イリアンを慕う第二王子ロベランは、元々の性格が増長され、嗜虐性が増し、デリンへの怒りをそのままカーランド人へぶつけるようになる。やがて出されるカーランド人の追放令。それは地方都市セヴァンにも広がった。
 セヴァンの少年タゼーレンは、優秀な<歌い手>アクセレンと織り手ファラフィナの息子。両親ともに魔法使いだが、タゼーレンにはその才がない。鐘の欠片によって攻撃性が増した自身の性格を恐れ、持て余しながら、家族や仲間と共に逃亡生活に入る。キャドから温泉町ダニシアへ、さらに伝説の都カーランドへ。だがロベランは、イリアンの足から鐘の欠片を取るため、タイダーとカイドロスを封じる術を見つけるため、さらにカーランド人を追い詰めて行く。目の前で同朋の殺戮を見、自身もかつての友人を殺してしまったタゼーレンは、絶望の中ロベランの責め苦にあって、とうとうカイドロスに自らを喰わせて一体となり、闇へ堕ちる。
 だがそれはカイドロス自身の苦痛にもなった。国中を飛び回り、アアランド人憎しとさらにアアランド人ばかりを屠るが、苦しみは増すばかり。そんな中、中に残るタゼーレンの欠片を頼りに、わずかに生き残ったカーランド人たちがカイドロスとタイダーを呼び寄せる。
 闇を封じることができるのは、古の魔が歌のみ。半ば廃墟と化したカーランドの図書館に残された<リュウダンの詠唱>を詠えるのは、おそらくタイダーのみ。デリンたちはタイダーの目の前に、魔が歌をつきつける。…


 ページを開いてびっくり、おお、二段組だよ、これは思ってたより時間かかりそうだ。
 で、実はこの二段組、読み難かった; 本作の重要なパーツ、唄の歌詞が一行に収まらなくて、分かれてしまうことが多々ありまして、そのたびにちょっといらっとしました。もうちょっと言葉の段組み考えてくれればいいのに。
 ロベランの軍隊の維持費はどこから捻出してたのかな。あ、そうか、行く先々で略奪してたからそれが軍資金か。
 だんだん理性を無くしていくロベラン、「できない子」だったタゼーレンが再構築という力を最後に発揮するクライマックス、なるほど、と思った箇所は沢山ありました。
 面白かった、面白かったんですが、語られなかった所も多々あって、それが気になって仕方がない。迷路のような図書館の中の、どこに詠唱はあったんだ? これだけで一章埋め尽くされるような出来事の筈なのに。タゼーレンの幼馴染セフィアはいつの間に虹色ヴァニ石の鏃を作ってた?? 台詞で語られてただけですか?? オナガンのいきなりの出生の秘密とか、伏線をもっと敷いていてもよかったんじゃないのかなぁ。
 もっと緻密な構成を、時間をかけて作れたんではないか、と思えて仕方がない。微妙に勿体なさの残る読後感でした。