読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

なりたい 畠中恵著 新潮社 2015年

 『しゃばけ』シリーズ連作短編集。

妖になりたい
 体が弱くて満足に働けない若旦那、せめて製品開発を、とハンドクリームの元祖を思い付いた。材料の蜜蝋を手に入れようと、養蜂をしている甚兵衛に声をかけると、甚兵衛は己の願いを叶えてくれないと蜜蝋を売らない、と言い出す。彼の望みは空を飛ぶことだった。妖にでもならないと無理なその願いを、天喜が誤解する。

人になりたい
 武士も職人も身分関係なく、己の作ったお菓子を持ち込んで食べあう“お江戸甘々会”で、菓子売りの勇蔵が殺された。所が勇蔵の死体は、次に見たときには血まみれになり、その次見たときには消えていたとか。話を聞いて、若旦那は勇蔵は人ではないのではないか、と推察する。

猫になりたい
 戸塚の猫又の長に、誰がなるかでもめている。立候補者は二匹、戸塚宿の虎と藤沢宿の熊市。地元の猫又だけでは決められず、若旦那にお鉢が回ってきた。丁度その場にいたてぬぐい染物屋の猫又・春一に、差配を依頼する若旦那。隠した帳面を見つけ出した者を長に、と言っていたのも束の間、長崎屋の大事な大福帳まで行方不明になってしまった。

親になりたい
 長崎屋で働く女中・おようの縁談相手は子連れだった。川端で拾った子だとかで、疳の虫が強く、かなりのきかん気で、周り中手を焼いている。その子が妖だと見抜いた若旦那、ところがその子の父親だと名乗る男が現れる。妖に人間の父親などいる筈がないのに。

りっぱになりたい
 長崎屋の馴染み、茶問屋 古川屋の息子、万之助が亡くなった。お通夜に出た若旦那は、万之助の幽霊を見てしまう。病弱だった自分を悔い、せめて夢枕に立って両親を安心させる一言を、と願う万之助。その一方で万之助の妹 お千幸が姿を消し、店の土間には身代金要求の文が置かれていた。

 若旦那快癒を願って、長崎屋の離れで神様をもてなした。でも神様には「呼び付けられた」との認識しかないらしく、ご馳走をふるまわれながらも不穏な雰囲気。若旦那に、来世何になりたいのかと訊いてくる。試された若旦那の答えは。…


 前作で若旦那のお嫁さんが決まったものの、結局あまり関係なく進む今回。うん、でもこんなもんでしょうね。相変わらずの日常、でも長屋で人間のふりして暮らし始めた面々は、長崎屋の異常な気前の良さに気が付き始めたようで。…そうなんだよ、お米でも何でも、食べたらなくなるんだよ。
 大の大人が卒倒するほど苦い薬湯を、あっさり飲める若旦那。…味覚大丈夫なのかしら;
 以前にも思ったんですが、作者、『しゃばけ』の現代ものを書くつもりなのかしら。若旦那の生まれ変わりと妖たちで。それはちょっと嫌なんだけどなぁ、と思いつつ。