読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

岸辺のヤービ Tales of Madguide Water 梨木香歩著/小沢さかえ画 福音館書店 2015年

 小さな三日月湖、マッドガイド・ウォーターのほとりに棲む、ハリネズミのような小さな生きものの男の子ヤービ。寄宿学校の教師である「わたし」が一粒のミルクキャンディをあげたことから、クーイ族の小さな男の子「ヤービ」との交流が始まる。ヤービをはじめとした小さな生きものたちの穏やかな暮らしと、彼らの一族がそっとかかえている過去と未来が少しずつひもとかれていきます。

 

 生きるものをたべることへの罪悪感から、食事をとることをやめてしまったヤービのいとこセジロ。そのセジロの友だちであり憧れであるベック族の女の子トリカ。蜂飼いのヤービのお父さんパパ・ヤービ、料理上手なお母さんママ・ヤービ。そして、過去に一族同士のいさかいをおさめたとされる英雄、「ほのおの革命家」……。

 

 穏やかな湖の岸辺でいとなまれる小さな一族たちの物語。やさしくて、かしこくて、まっすぐな男の子ヤービと「わたし」の出会いがおりなす長編ファンタジー「マッドガイド・ウォーターシリーズ」第1作です。  (出版社HPより)

 

 正当な児童書。
 小さい頃親しんだ懐かしい感触がよみがえって、嬉しくて仕方ない。柔らかな語りで細部まで描かれるヤービ達の生活、挿画と一体化した内容。翻訳物の児童書のよう。
 装丁も明らかにそれを意識した作りですよね、表紙をめくってまず現れる地図、横文字の奥付。『クマのプーさん』や『ムーミン』のシリーズをオマージュしたような。絵を切り離しては考えられない。
 ヤービたちはいずれ「ウタドリさん」の前からいなくなってしまうんだろうな、という予感もはらませつつ、その理由が「大きい人たちの影響」だけでなく、温暖化まで関わってくるのが梨木さんらしい、と言ったところでしょうか。
 ファンタジーではなく児童書。まさしくそんな感じがしました。