読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ジーン・ワルツ 海堂尊著 新潮社 2008年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 マリアクリニックには5人の妊婦が通っている。自然妊娠が三人、人工授精が二人。
 院長の三枝茉莉亜は末期の肺癌で余命幾ばくもなく、跡取りと目された長男の久広は勤務している極北市での医療事故の責任を問われて警察に拘束されている状態。5人の出産が終わったら閉院が決まっていた。
 望んだ子供、望まなかった子供、予想外に授かった子供。帝華大学から非常勤で通っている曽根崎理恵が診察する八か月の間に、それぞれの子供の運命が流れる。
 予想外に授かった子供は流産し、堕ろす気満々だった19歳の少女は産む決意をする。胎児が無脳症であることが判明した妊婦は、それでも出産するといい、理恵を驚かせる。
 人工授精の二人の経過は順調だったが、うち一人55歳の患者には代理母の疑惑が掛かっていた。それが本当なら、診察に携わった理恵の立場は危ういものに、引いては理恵の所属する大学の研究室まで危険にさらされる。理恵の上司にあたる帝華大学準教授・清川は、屋敷教授の指示の元、真相を探ることになる。…

 うう。下腹部が痛い; こういう類の話は、読んでいるこちらのおナカも痛くなる気がして苦手なんですが;;
 相変わらず簡潔で読み易い文章。映画にもなってましたよね、おかげで曽根崎先生のビジュアルは菅野美穂さんで浮かびました。相変わらず現代日本の医療制度が抱える問題を明らかにしつつ、久広先生が巻き込まれた医療事故は、明らかに現実の出来事をモデルにして書かれたものですし。
 繰り返し書かれる生命誕生の奇蹟、その危うさ。私も以前から、不妊治療に保険が利くようにするべきだろう、とは思っています。そのくせED治療剤はさっさと認可する姿勢は如何なものだろう。女性には決して優しくないんですよね。
 ミステリーとしては、曽根崎先生の手術場面が明らかになった段階で大体の予想はつきました。まぁ、海堂さんの作品の肝は謎解きではないですし。ただ、清川先生をあんなにも巻き込むとは思ってなかったけど; 全て解ってやってる曽根崎先生はともかく、もう一人の人工授精患者に対しては、あれはいいのかなぁ、何だか抵抗があるなぁ;;
 産む決意をする二人の母親の姿には泣きそうになりました。海堂さんに泣かされるとは思わなかった(←何気に失礼;)。